手頃な宿泊料金と良質な天然温泉、そして日本郵政グループが運営する安心感から、長年シニア層やファミリー層に親しまれてきた「かんぽの宿」。旅の計画を立てる際に、かつて利用した宿の情報を調べ直して「閉館したの?」「別のホテル名に変わっている?」と驚いた方も少なくないはずです。
2022年春の事業譲渡を機に、全国に展開していた施設群は運営体制を根本から刷新しました。2026年現在、かつての施設一覧はどう再編され、どのようなサービスへと進化したのか。一斉売却の舞台裏から現在の予約方法、気になる温泉の評判まで、取材データを基にその全貌を解き明かします。
【真相】なぜ消えた?日本郵政による「かんぽの宿」一斉売却の理由

かつて全国津々浦々に存在したかんぽの宿は、簡易保険の加入者向け福祉施設として誕生した歴史を持ちます。風光明媚な観光地や名湯を抱える好立地、広々とした客室設計を武器に高い稼働率を誇った時代もありましたが、時代の変化とともに厳しい逆風に晒されることとなりました。
最大の売却理由は、長期にわたる巨額の営業赤字です。バブル崩壊後の観光需要の変化、施設の老朽化に伴う維持管理コストの増大、民間ホテルチェーンとの激しい価格競争が重なり、事業の継続は困難を極めていました。公的な色彩を残した運営形態では柔軟な料金設定や機動的なリニューアルが難しく、赤字を日本郵政の他事業で補填する構造に対し、経営効率化を求める声が年々強まっていた背景があります。
抜本的な経営改革を断行するため、日本郵政は2022年4月に宿泊事業からの完全撤退を決定。入札の結果、豊富なホテル運営実績を持つマイステイズ・ホテル・マネジメントを中心とする民間グループへ、一括して施設が売却される運びとなりました。
【全33施設】旧かんぽの宿一覧の現在|亀の井ホテルへのリブランド状況
売却対象となった宿泊32施設・付帯1施設のうち、29施設(後に中沢ヴィレッジ等の特殊形態を除く主要拠点)は、マイステイズ社が展開する伝統ブランド「亀の井ホテル」へとリブランドされました。各地の施設は名称を変え、洗練された温泉リゾートとして再出発を切っています。
代表的な旧施設の現況一覧は以下の通りです。
【東北・関東エリア】
・かんぽの宿 一関 → 亀の井ホテル 一関(岩手県)
・かんぽの宿 塩原 → 亀の井ホテル 塩原(栃木県)
・かんぽの宿 喜連川 → 亀の井ホテル 喜連川(栃木県)
・かんぽの宿 草津 → 草津温泉ホテルリゾート等への展開
・かんぽの宿 大洗 → 亀の井ホテル 大洗(茨城県)
・かんぽの宿 鴨川 → 亀の井ホテル 鴨川(千葉県)
・かんぽの宿 青梅 → 亀の井ホテル 青梅(東京都)
【東海・北陸・近畿エリア】
・かんぽの宿 熱海(本館・別館) → 亀の井ホテル 熱海(本館・別館/静岡県)
・かんぽの宿 伊豆高原 → 亀の井ホテル 伊豆高原(静岡県)
・かんぽの宿 知多美浜 → 亀の井ホテル 知多美浜(愛知県)
・かんぽの宿 福井 → 亀の井ホテル 福井(福井県)
・かんぽの宿 彦根 → 亀の井ホテル 彦根(滋賀県)
・かんぽの宿 有馬 → 亀の井ホテル 有馬(兵庫県)
・かんぽの宿 淡路島 → 亀の井ホテル 淡路島(兵庫県)
・かんぽの宿 奈良 → 亀の井ホテル 奈良(奈良県)
・かんぽの宿 富田林 → 亀の井ホテル 富田林(大阪府)
・かんぽの宿 赤穂 → 亀の井ホテル 赤穂(兵庫県)
【中国・四国・九州エリア】
・かんぽの宿 鳥取岩井 → 亀の井ホテル 鳥取岩井(鳥取県)
・かんぽの宿 光 → 亀の井ホテル せとうち光(山口県)
・かんぽの宿 観音寺 → 亀の井ホテル 観音寺(香川県)
・かんぽの宿 高知 → 亀の井ホテル 高知(高知県)
・かんぽの宿 北九州 → 亀の井ホテル 玄界灘(福岡県)
・かんぽの宿 柳川 → 亀の井ホテル 柳川(福岡県)
・かんぽの宿 別府 → 亀の井ホテル 別府(大分県)
・かんぽの宿 阿蘇 → 亀の井ホテル 阿蘇パークリゾート(熊本県)
売却に伴い、外観やロビーの大規模な改装が施され、昭和の公共の宿という印象から開放的で現代的な温泉ホテルへと見事な変貌を遂げています。
閉鎖・営業終了した施設一覧と気になる跡地の現状
30以上の拠点が亀の井ホテルとして引き継がれた一方で、耐震基準の課題や建物の老朽化度合い、立地採算性の問題から、譲渡の過程またはそれ以前に閉鎖された施設も存在します。
例えば、かんぽの宿 勝浦(千葉県)は、施設構造や立地条件の観点から民間移管の枠組みには入らず、運営終了後に地元自治体やデベロッパー主導での利活用計画・解体が進められました。また、過去に閉鎖された「かんぽの宿 那須」や「かんぽの宿 石和」などの跡地は、地元の観光事業者へ個別売却されたり、更地化された後に別用途(福祉施設やグランピング施設、メガソーラー用地など)へ転用されたりと、地域によって歩んだ道は分かれています。
かつての施設を訪れる際は、単に名称が変わっただけでなく、施設そのものが閉館・解体されているケースもあるため、事前の所在確認が欠かせません。
生まれ変わった温泉の評判と旧かんぽの宿の宿泊料金相場
リブランド後の大きな関心事である「宿泊体験の質」はどう変化したのか。宿泊客の口コミや評判をリサーチすると、明確なポジティブ変化が見て取れます。
【温泉と設備の評判】
もともとかんぽの宿は自家源泉を所有している施設が多く、「泉質の良さはそのままに、浴場のアメニティや脱衣所が清潔でおしゃれになった」と高評価を集めています。サウナの新設やインフィニティ露天風呂への改装を実施した拠点もあり、若い旅行者層の取り込みにも成功しています。
【食事と名物サービス】
画一的だった会席料理は、地域の旬を取り入れたビュッフェや本格和洋会席へと刷新。特に亀の井ホテル名物となった「夜鳴き担々麺(無料夜食サービス)」は、宿泊客から圧倒的な支持を得ています。
【宿泊料金の相場感】
旧かんぽの宿時代は1泊2食付きで1人あたり1万円台前半が中心でしたが、現在は1泊2食付きで1万3,000円〜2万5,000円前後が標準的な相場です。インフレやリニューアルによる設備投資を反映して若干の価格改定は見られるものの、近隣の高級旅館と比較すると依然としてコストパフォーマンスは極めて優秀と言えます。
【2026年最新】マイステイズ運営の旧施設・現在の予約方法と賢い利用術
かつては郵便局に置かれたパンフレットや電話窓口、旧専用WEBサイトからの予約が主流でしたが、運営母体が変わったことで予約の利便性は飛躍的に向上しました。
① 亀の井ホテル公式サイト(マイステイズ公式)
ベストレート保証が適用されることが多く、会員プログラム「MYSTAYS Elite」に登録すればポイント還元やアーリーチェックインなどの優待が受けられます。
② 大手オンライン旅行予約サイト(OTA)
楽天トラベル、じゃらんnet、一休.com、Yahoo!トラベルなど主要サイトにすべて対応しています。各社が発行する割引クーポンやポイント還元セールを活用することで、公式価格より割安に予約できるケースも多々あります。
③ 電話予約の継続
インターネット操作に不慣れなシニア層向けに、各ホテルの直通電話窓口も引き続き稼働しています。かつての常連客への配慮が維持されている点も安心材料のひとつです。
【かんぽの宿一覧】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:かんぽの宿の会員カードやポイントカードは現在も使えますか?
A1:日本郵政が発行していた旧かんぽの宿メンバーズカードや割引券は、事業譲渡に伴いすべてサービスを終了しています。現在はマイステイズ・ホテル・マネジメントが提供する会員制度をご利用ください。
Q2:郵便局の窓口で旧かんぽの宿の予約や申し込みはできますか?
A2:郵便局窓口での宿泊予約受付は完全終了しています。亀の井ホテルの公式サイト、各宿泊予約サイト、または直接各施設への電話でお申し込みください。
Q3:日帰り入浴の利用は現在も可能ですか?
A3:多くの施設で日帰り入浴の営業を継続しています。ただし、宿泊客の混雑状況や施設点検によって利用時間が変動するため、訪問前に各ホテルの公式サイトで営業時間を確認することをおすすめします。
赤字と老朽化に苦しんだ日本郵政の宿泊施設群は、マイステイズの手により「亀の井ホテル」を中心とする魅力的なリゾートホテルへと生まれ変わりました。古き良き名湯のぬくもりと恵まれた立地は受け継がれつつ、モダンな客室、地域の美食、充実したアメニティが加わったことで、幅広い世代が快適に過ごせる空間へとアップデートされています。
懐かしいあの宿が今どうなっているのか。次の休暇は、新しく生まれ変わった元かんぽの宿へ足を運び、その劇的な進化を肌で体感してみてはいかがでしょうか。