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ナポリタン発祥の地は横浜!ホテルニューグランド誕生秘話と真相

安藤 澪 安藤 澪 • 更新: • 公開: • 読了約 9 分
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喫茶店や洋食店の定番として、世代を問わず愛され続けているスパゲッティ・ナポリタン。どこか懐かしいケチャップの香ばしさとモチモチの太麺は、日本の食文化に深く根付いています。しかし、名前に「ナポリ」と冠しながらも、本場イタリアには存在しない日本独自の料理であることは意外と知られていません。

昭和から令和の今日に至るまで日本の国民食として君臨するこの料理は、いつ、どこで、どのようにして生まれたのでしょうか。その歴史の扉を開くと、戦後の横浜で異国文化を受け止め、独自の美学で昇華させた料理人たちの情熱とドラマが浮かび上がってきます。

【発祥の真相】ナポリタンはイタリア生まれではない?日本発祥パスタの理由

ナポリタン発祥の地

「ナポリタン」という名前からイタリア・ナポリの郷土料理を想像しがちですが、イタリア本国に該当するパスタ料理はありません。ナポリタンは正真正銘、日本生まれの和製洋食です。

日本発祥パスタとなった背景には、戦後の食糧事情と進駐軍(GHQ)の存在が深く関わっています。第二次世界大戦後、米軍に接収されていた横浜のホテルや街頭で、米兵たちが軍用レーション(保存食)のスパゲッティに塩・コショウやトマトケチャップを和えて簡易的に食べていた光景が、すべての出発点となりました。

当時の日本人シェフたちは、その粗削りな食べ方に着目しながらも、「一流のホテル料理として通用する一皿に仕立て直したい」という強い探求心を抱きます。こうして、アメリカ兵の大雑把な軍隊食をベースに、フランス料理の技術を注ぎ込んで再構築されたのが、私たちが知るナポリタンの原型です。

【横浜ナポリタン歴史】ホテルニューグランドと入江茂忠総料理長の誕生秘話

横浜ナポリタンの歴史を語る上で欠かせないのが、ナポリタン発祥の店として名高いホテルニューグランドです。1927年(昭和2年)に開業したこのクラシックホテルは、マッカーサー元帥やチャーリー・チャップリンなど数々のVIPを迎えてきた日本の洋食文化の金字塔です。

戦後、米軍に接収されていた同ホテルで腕を振るっていたのが、第2代総料理長を務めた入江茂忠(いりえ しげただ)氏でした。入江氏は米兵が茹でた麺にケチャップをかけて食べる姿を見て、「ホテルのお客様にケチャップを絡めただけの麺を出すわけにはいかない」と一念発起します。

そこで入江氏は、生トマト、水煮トマト、刻んだタマネギやニンニク、オリーブオイルをじっくり煮込んだ本格的なトマトソースを開発。ハムやマッシュルームをバターでソテーし、アルデンテではなくあらかじめ茹で置きして落ち着かせたスパゲッティと絡める、エレガントな「スパゲッティ ナポリタン」を完成させました。中世フランス料理でトマトを使った料理に「ナポリーテーヌ(ナポリ風)」と名付ける慣習があったことから、この名前が付けられたと伝えられています。

【元祖レシピ詳細】生トマトから生まれたホテルの味とケチャップナポリタン由来の違い

多くの人が思い浮かべる「オレンジ色のケチャップナポリタン」と、ホテルニューグランドの「元祖ナポリタン」には、決定的な違いが存在します。

ホテルニューグランドが守り続ける元祖ナポリタンレシピ詳細は以下の通りです。

  • ソースのベース:ケチャップは一切使わず、生のトマトとトマトペーストを香味野菜とともに煮詰めた自家製トマトソースを使用。
  • 具材:ロースハム、マッシュルーム、ソテーしたタマネギ。ピーマンは本来入りません。
  • 仕上げ:バターで麺と具材、ソースを素早く和え、まろやかなコクとトマト本来の爽やかな酸味を引き出す。

一方、私たちが日常的に口にするケチャップナポリタンは、ケチャップをフライパンでしっかり焼き付けることで甘みと香ばしさを凝縮させる調理法をとります。ホテル仕立てのフレッシュで上品な味わいと、家庭や喫茶店で親しまれる濃厚なケチャップ味は、同じルーツを持ちながら異なる進化を遂げた双子のような関係にあります。

【センターグリルの功績】街の洋食喫茶店へ広がった大衆化のルーツ

では、現在の大衆的なケチャップナポリタンはどこで誕生したのでしょうか。その答えは、同じく横浜・野毛の老舗洋食店センターグリルにあります。

1946年(昭和21年)に創業したセンターグリルの創業者・石橋豊吉氏は、ホテルニューグランド初代総料理長サリー・ワイル氏が経営していたレストランで修行を積んだ料理人でした。石橋氏は、当時まだ高級品で手に入りにくかった生のトマトや本格トマトソースの代わりに、安価で保存が利くカゴメトマトケチャップを採用しました。

極太の2.2ミリ麺を一晩寝かせてモチモチにし、タマネギ、ハム、ピーマンとともに強い火力で炒め上げるセンターグリルのスタイルこそが、ケチャップナポリタンの元祖です。この手軽で力強い美味しさが全国の洋食店や純喫茶へと波及し、日本の喫茶店文化を象徴する定番メニューへと成長していきました。

ナポリタンだけでなく、シーフードドリアやプリン・ア・ラ・モードなど、数々の洋食メニューが横浜から誕生しています。その背景には、開港地ならではの特有な歴史がありました。

幕末の開港以来、横浜には外国人居留地が作られ、最新の西洋食材や調理器具、海外の一流シェフたちが次々と集まりました。大正から昭和初期にかけては豪華客船が頻繁に行き交い、船上で磨かれた最先端のフレンチやイタリアンの技術が港町・横浜へ還元されていったのです。

本物の西洋料理の技法を身につけた日本人シェフたちが、手に入る日本の食材と人々の味覚に合わせて柔軟にアレンジする土壌が、横浜には整っていました。伝統を守りつつも型にとらわれない港町特有のミクスチャー感覚が、日本独自の洋食文化を花開かせた最大の要因です。

【発祥地の現在】名店の味と巡礼スポット

歴史を知った上で訪れる発祥の地・横浜は、食の探訪先として格別の魅力を放っています。誕生から半世紀以上が経過した現在も、当時のレシピと佇まいを体験できる名店がしっかりと息づいています。

ホテルニューグランドの本館1階にある「本館バー シーディアン」や「ザ・カフェ」では、窓外に山下公園の緑を眺めながら、創業当時の気品漂う元祖ナポリタンを味わうことができます。また、昭和レトロな雰囲気を色濃く残す野毛の「米国風洋食 センターグリル」では、銀色のステンレス皿に盛られた濃厚なケチャップナポリタンが今も変わらぬ人気を誇ります。

山下町から野毛エリアへと歩を進め、上品なホテルの味と活気ある下町の味を食べ比べる体験は、横浜を訪れる多くのグルメ愛好家を惹きつけてやみません。

【ナポリタン発祥の地】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:ナポリタンにピーマンが入るようになったのはなぜですか?
A1:元祖であるホテルニューグランドのレシピにはピーマンは入っていませんでした。戦後の大衆洋食店や家庭に広まる過程で、彩りを豊かにし、手に入りやすい緑黄色野菜としてピーマンが加えられるようになり、現在の定番スタイルが定着しました。

Q2:麺を一晩寝かせる(茹で置きする)理由は何ですか?
A2:茹でたての麺はソースの水分を吸いすぎてベチャつきやすくなります。一度茹でた太麺を冷水で締め、油を絡めて一晩寝かせることで、水分が麺全体に行き渡り、喫茶店特有のもっちりとした独特のコシと歯ごたえが生まれます。

Q3:イタリアでナポリタンを注文するとどうなりますか?
A3:イタリア現地のレストランで「Napolitana」と注文しても、日本風のナポリタンは出てきません。ナポリ風のシンプルなトマトソースパスタ(Spaghetti alla Napoletana)や、トマトソースを使った別料理が出てくることが一般的です。

イタリアではなく日本の横浜で生まれたナポリタン。それは戦後の苦難の時代に、進駐軍の文化を逞しく取り入れ、日本人の舌に合うよう磨き上げた先人たちの知恵と技術の結晶です。

ホテルニューグランドの気品あるトマトソースから始まり、センターグリルのケチャップ味によって大衆へ広まったナポリタンは、今や高級ホテルから下町の喫茶店、家庭の食卓まで幅広く愛されています。横浜の歴史と港町のロマンに思いを馳せながら味わう一皿は、いつの時代も私たちの心を温かく満たしてくれます。

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コンテンツディレクター 安藤 澪
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