高校の古文授業や定期テストで必ずと言っていいほど登場する鎌倉時代の説話集『古今著聞集』。単語の区切りが曖昧なままなんとなく現代語訳を丸暗記しようとして、助動詞の識別問題や敬語の方向を問う記述で手痛い失点を重ねてしまう受験生は後を絶ちません。
古文読解の土台であり最大の得点源となるのが「正確な品詞分解」です。本文を一語一語品詞に分解し、文法的な意味を特定できるようになれば、初見の説話であっても主語の取り違えや解釈ミスを劇的に減らすことができます。本記事では、テストで狙われる重要文法から代表的な説話の具体的な品詞分解ステップまで、得点力に直結するポイントを徹底的に紐解きます。
【基礎知識】『古今著聞集』の成立背景と押さえるべき全体あらすじ

『古今著聞集(ここんちょもんじゅう)』は、鎌倉時代中期の1254年(建長6年)頃、伊賀守を務めた橘成季(たちばなのなりすえ)によって編纂された世俗説話集です。『今昔物語集』や『宇治拾遺物語』と並ぶ説話文学の最高峰として知られ、全20巻・約700話に及ぶ膨大なエピソードが収録されています。
古今著聞集のあらすじや構成を俯瞰すると、神祇、釈教、政道、武勇、文学、和歌、管弦、草木、魚虫など30のジャンル(篇)に細かく分類されているのが大きな特徴です。王朝貴族の優雅な風流談から、武士の勇猛果敢な武勇譚、さらには庶民や動物にまつわる滑稽話まで、当時の社会情勢や人々の価値観を鮮やかに映し出しています。
テスト対策の観点において重要なのは、橘成季が「教訓」や「風流・芸道への賞賛」を込めて編纂している点です。説話の末尾には筆者の批評や教訓的なまとめが置かれることが多く、その部分に使われる助動詞や助詞の意味を正確に読み取ることが、文章全体の主旨理解へダイレクトにつながります。
【つまずき解消】品詞分解で点差がつく重要助動詞の識別と活用表の確認
古文の文法問題を攻略する上で避けて通れないのが古文の助動詞活用表の定着と、複数意味を持つ助動詞の識別です。『古今著聞集』の本文中にも、文脈判断が問われるトラップが数多く仕掛けられています。
特に差がつく3大識別パターンを確認しましょう。
①「る・らる」の識別(受身・尊敬・自発・可能)
直前の動詞が四段・ナ変・ラ変の未然形なら「る」、それ以外の未然形なら「らる」が接続します。文中に「~に(人)」があれば「受身」、心情動詞・知覚動詞に付けば「自発」、打消・反語を伴えば「可能」、身分の高い人物の動作であれば「尊敬」と判断します。説話集では登場人物の身分関係が複雑なため、誰の動作かを見極めることが識別の第一歩です。
②「なり」の識別(伝聞・推定 vs 断定・存在)
接続によって意味が分かれます。終止形接続(ラ変型は連体形)であれば「〜という(伝聞)」「〜のようだ(推定)」となり、連体形・体言接続であれば「〜である(断定)」「〜にある(存在)」となります。直前の単語の活用形を特定できるかが勝負の分かれ目です。
③「なむ」の識別(願望の終助詞 vs 係助詞 vs 助動詞の連用形+助動詞・助詞)
文末にあって未然形接続なら「他者への願望(〜してほしい)」、文中に入って文末を連体形にするなら「強意の係助詞」、連用形接続なら完了の助動詞「ぬ」の未然形+推量・意志の助動詞「む」です。加えて、係り結びの法則(「ぞ・なむ・や・か」=結びが連体形、「こそ」=結びが已然形)が絡む構造は、定期テストでも頻出の出題ポイントとなっています。
【主語を見抜く】敬語表現から「敬意の方向」を特定して現代語訳を完成させるコツ
古典説話を読解する際、多くの学習者が「誰が誰に対して話しているのか、誰の行動なのか」を見失います。平安・鎌倉期の文章は主語が頻繁に省略されるため、敬語の敬意の方向を正確に辿ることが正確な古今著聞集の現代語訳を作るための必須技術です。
敬語は大きく分けて以下の3種類が存在し、それぞれ敬意の向かう先が異なります。
・尊敬語(給ふ、おはす、のたまふ など):動作の主(主語)を高める(=地の文なら「筆者から動作主へ」、会話文なら「話者から動作主へ」)。
・謙譲語(奉る、申す、参る、承る など):動作の及ぶ相手(客体・目的語)を高める(=地の文なら「筆者から相手へ」、会話文なら「話者から相手へ」)。
・丁寧語(侍り、候ふ など):聞き手や読者を高める(=地の文なら「筆者から読者へ」、会話文なら「話者から聞き手へ」)。
たとえば本文に「言ひ奉る」とあれば、「言った人物」ではなく「言葉をかけられた相手」が高貴な人物であると分かります。品詞分解を行う際は、動詞や補助動詞に敬語が含まれているかを必ずチェックし、主語の特定に役立てる習慣をつけましょう。
【頻出章段で実践】「刑部卿敦兼出家」の品詞分解と徹底読解ガイド
高校の教科書で最も採用率が高い章段の一つが「刑部卿敦兼出家(ぎょうぶのきょうあつかねのしゅっけ)」です。貴族である敦兼が出家を決意する場面の緊迫した心情描写は、文法問題の宝庫となっています。
代表的な一文を品詞分解してみましょう。
【対象例文】
「敦兼卿、俄かに出家し給ひにけり。」
【品詞分解と文法解説】
・敦兼卿(あつかねのきょう):名詞(主語)
・俄かに(にわかに):副詞(急に、唐突に)
・出家し(しゅっけし):サ変動詞「出家す」の連用形
・給ひ(たまひ):尊敬の補助動詞「給ふ」の連用形(筆者から敦兼卿への敬意)
・に:完了の助動詞「ぬ」の連用形
・けり:過去(または詠嘆)の助動詞「けり」の終止形
【現代語訳】
「敦兼卿は、突然に出家なさってしまったのだった。」
「にけり」の並びは「完了の助動詞『ぬ』の連用形+過去の助動詞『けり』」の鉄板パターンです。この「に」を格助詞や断定の助動詞と見誤らないことが、正確な品詞分解の基本となります。
【定番説話の比較攻略】「能因法師」や「弓張月」にみる文法ポイントと『宇治拾遺物語』との共通項
『古今著聞集』には他にも頻出の有名章段が多数あります。歌人として名高い能因法師の奇行と風流心を描いた「能因法師」の品詞分解や、武士の剛勇さを物語る「弓張月」の品詞分解は、定期テスト対策として確実に押さえておきたい単元です。
能因法師の説話では、「都をば霞とともに立ちしかど」という有名な和歌の背景(白河の関を見るために日焼けをして旅情を装ったエピソード)が語られます。ここでは助詞「ば」の接続(未然形接続=仮定条件、已然形接続=確定条件)や、過去の助動詞「き」「けり」の使い分けが問われます。
また、説話文学の双璧をなす『宇治拾遺物語』の品詞分解と比較すると、共通して会話文のなかに「侍り」「候ふ」といった丁寧語や、「〜にこそ」「〜ぞ」による係り結びが多用されていることがわかります。両作品ともに文法的な骨組みは共通しているため、説話特有のテンポ感と省略を補う読み方を身につければ、古文全体の読解速度が飛躍的に向上します。
【2026年版】定期テスト・大学入試で満点を狙う『古今著聞集』対策ロードマップ
効率的かつ確実に得点を伸ばすための、実践的な定期テスト古文対策の手順をまとめました。
ステップ1:教科書本文の自力品詞分解
まずはノートの左側に本文を一行空けで書き写し、単語ごとにスラッシュを入れて品詞・活用形・基本形を書き込みます。辞書を引かずに自力で挑み、どこで躓いたかを可視化が必要です。
ステップ2:助動詞と敬語のマーキング
助動詞には赤線、敬語には青線を引き、助動詞の意味(推量・打消・使役など)と敬語の種類・敬意の方向を余白にメモします。
ステップ3:逐語訳の作成と主語の補填
品詞分解の結果に忠実な直訳を作ります。その際、(敦兼は)(法師が)のように省略された主語を括弧付きで補うトレーニングを徹底してください。
この3ステップを繰り返し実践することで、古今著聞集のテスト対策にとどまらず、入試本番で初見の古文が出題された場合でも揺らがない強固な文法基礎力が完成します。
【古今著聞集の品詞分解】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:『古今著聞集』の品詞分解で一番最初に見分けるべき単語は何ですか?
A1:まずは文末の用言(動詞・形容詞・形容動詞)と助動詞です。文末の形(終止形なのか連体形・已然形なのか)を確認することで、係り結びの有無や文の区切り(文構造)が明確になり、文全体の構造をスムーズに分解できるようになります。
Q2:「給ふ」の識別で、尊敬語か謙譲語か迷ったときはどうすればよいですか?
A2:基本として「給ふ」は四段活用なら尊敬語(〜なさる)、下二段活用なら謙譲語(〜ていただく)です。『古今著聞集』など中世の説話では四段活用の尊敬語が圧倒的多数ですが、「思ひ給ふ」「見給ふ」などの形で会話文中に現れる下二段の謙譲語(自己の動作をへりくだる)との識別はテスト頻出のため、活用の種類(未然形が「たまへ」になるか等)を必ず確認しましょう。
Q3:定期テスト前に品詞分解を短時間で仕上げる裏ワザはありますか?
A3:学校の授業で先生が強調した「助動詞の識別」と「係助詞による結びの変形」に絞って復習することです。特に「なり」「る・らる」「ぬ・ね」の識別は設問を作りやすいため、該当箇所だけをピックアップして自力で分解・解説できる状態にしておくと短時間で高得点を狙えます。
『古今著聞集』の読解において、品詞分解は単なる丸暗記作業ではありません。文の骨組みを論理的に解読し、千年前の筆者が込めた意図や登場人物の感情を正確に復元するための必須スキルです。
助動詞の接続と意味の特定、敬意の方向による主語の補填、そして文脈に即した現代語訳。この一連のプロセスを一つひとつの説話で愚直に積み重ねることが、定期テストでの高得点、ひいては大学入試における確固たる古文の得点力へと直結します。まずは今日扱った章段の1行から、丁寧な品詞分解をスタートさせてみてください。