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「及び」と「並びに」の使い分けルール!契約書や公用文で迷わない実践法

黒田 大河 黒田 大河 • 更新: • 公開: • 読了約 10 分
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ビジネス文書の作成や契約書のリーガルチェックを行う際、「及び」と「並びに」のどちらを使うべきか迷い、キーボードを打つ手が止まった経験を持つ人は少なくありません。日常会話では同義語のように流してしまう言葉ですが、法令やビジネスの世界では両者の間に厳密な力関係が存在します。

誤った使い方を放置すると、単に「日本語が不自然」という印象を与えるだけでなく、契約条項の解釈を巡って法的な係争に発展するリスクすら孕んでいます。本稿では、法律や公用文が定める並列接続詞の明確なルールと、実務ですぐに役立つ実践的な使い分けを整理してお届けします。

【決定的な違い】「及び」と「並びに」の優先順位と階層構造のルール

及び並びに使い方

「及び」と「並びに」を使い分ける核心は、接続詞が持つ階層構造(優先順位)を理解することにあります。法律用語としてのルールにおいて、両者は対等な関係ではなく、「及び」が最小単位の接続を担当し、「並びに」はその外側で大きなグループ同士を束ねる役割を担います。

具体的には、グループ分けが生じない単一レベルの並列であれば、使用するのは「及び」だけです。ここで「並びに」を単独で使うことは、法制上の原則として認められていません。文脈の中で「AとBという小さな塊」と「CとDという小さな塊」を結びつけたい場合に初めて、上位の接続詞として「並びに」が登場します。

階層関係を図式化すると、【(A及びB)並びに(C及びD)】という形になります。数式に例えるなら、「及び」はカッコの中にある足し算であり、「並びに」はカッコの外同士を結ぶ結合子のようなものです。この主従関係さえ頭に入れておけば、ビジネス文書接続詞ルールに沿ったスマートなドラフト作成が可能になります。

【公用文と法制執務】法律のプロが厳守する並列接続詞の鉄則

国の法令を起草する法制執務や、自治体の行政文書では、昭和の時代から現在に至るまで一貫した並列ルールが運用されてきました。文化庁が改定を取りまとめた「公用文作成の考え方」においても、言葉の意味を正確かつ一義的に伝えるための表記基準が明確に示されています。

法制執務において定められている基本方針は極めてシンプルです。

最初に、並列する語句に段階差(意味の強弱やグループ分け)がない場合、接続詞は必ず「及び」を用います。例えば「役員及び従業員」という表記が正当であり、「役員並びに従業員」と書くのは公用文の基準から外れます。「並びに」は、あくまで「及び」によって結ばれた小さな単位が存在することを前提に、それらより一段大きな単位を接続するために後から呼び出される補助的な接続詞です。

役所が発行する通知文や条例案に目を通すと、この原則がミリ単位で徹底されている事実が見て取れます。文書の受け手全員に寸分の狂いもなく同じ解釈をさせるため、接続詞一つにも厳密な序列が課されています。

【パターン別例文】2つから3つ以上の並列まで!正しい使い分けの実例集

実務で頻出するシチュエーションを想定し、具体的な例文で構造を確認していきます。並べる要素の数やグループの深さによって、組み立て方は段階的に変化します。

① 2つの語句を単純に並べる場合
・正:東京本社及び大阪支社
・誤:東京本社並びに大阪支社
階層が存在しないため、「及び」でシンプルに結びます。

② 3つ以上の並列(同等のグループ)
・正:東京本社、大阪支社及び名古屋支社
・誤:東京本社、大阪支社、並びに名古屋支社
3つ以上の並列では、最後の語句の直前にのみ「及び」を置き、それまでの要素は読点「、」で繋ぎます。

③ 2段階のグループ分けを伴う並列
・正:取締役及び監査役、並びに執行役員及び部長職
「役員クラス」と「管理職クラス」という2つの大グループがあり、それぞれのグループ内部を「及び」で結んだ上で、大グループ同士を「並びに」で結合しています。読点を「並びに」の直前に打つことで、視覚的にも境界線が明確になります。

④ 3段階以上の複層的な並列(大並びにと小並びに)
法制執務では、階層が3段階に及ぶケースもあります。その際は、最も小さな接続に「及び」を使い、中間と最大の接続にはいずれも「並びに」を用います。その際、より大きな接続を行う「並びに」の直前に読点を置くなどして文脈の区切れを読者に示します。実務では文が複雑化しすぎないよう、箇条書きへ分割する配慮も求められます。

【契約書リーガルチェック】実務で恥をかかないための注意点と「かつ」との併用

企業の法務部や顧問弁護士が行う契約書リーガルチェックにおいて、「及び」と「並びに」の誤用は真っ先に修正対象となります。単なる誤字脱字と異なり、権利関係や義務の範囲が根本から変わってしまう恐れがあるためです。

例えば、「甲及び乙並びに丙は、損害賠償義務を負う」と記載されていた場合、甲と乙が密接な一連の共同責任者であり、丙は別の立場として責任を負うのか、それとも3名が全く対等に連帯責任を負うのかで解釈が分かれる火種になりかねません。対等な並列であれば「甲、乙及び丙」と書くのが法的な正解です。

また、実務で混同しやすいのが「かつ」との使い分けです。「及び」「並びに」が名詞や名詞句の「並列」を司るのに対し、「かつ」は前後の要件を同時に満たすべき「重複条件(AND条件)」を表す際に用いられます。

「満20歳以上であり、かつ実務経験を3年以上有する者」のように、主として用言(述語的な条件)を重ね合わせる場面で機能します。名詞を列挙する並列接続詞と、要件を絞り込む条件接続詞の役割を峻別してドラフトに落とし込むことが、隙のない契約書作成の鉄則です。

【英語表現の対応関係】andやas well asはどう使い分けるべきか

グローバルな法務実務や英文契約書(英米法系ドキュメント)を扱う際、日本語の「及び」「並びに」をどのように英訳・和訳すべきかという点も重要です。英語には日本語の「並びに」に1対1で完全一致する単一の法律専門接続詞は存在しませんが、構文の工夫によって同じ階層関係を再現します。

基本構造として、小さな並列には「and」を用い、大きなグループを結ぶ際には「as well as」や「together with」、あるいは「along with」を配置するのが一般的です。

例文:
「Directors and Auditors, as well as Executive Officers」
(取締役及び監査役、並びに執行役員)

英語圏の契約ドラフティングでは、接続詞の多用による解釈の曖昧さを避けるため、セミコロン「;」を活用したリスト化や箇条書き(Tabulation)を用いる頻度が日本以上に高くなっています。翻訳やクロスボーダー契約の確認時には、日本語側の「及び」「並びに」の階層構造が英語側で正確に反映されているか、細心の注意を払う必要があります。

【及び 並びに 使い方】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:日常生活や社内チャットで「A並びにB」と書いても通じますか?
A1:意味自体は相手に通じるため、重大な伝達ミスになることは稀です。ただし、法制執務や公用文の規範に詳しい相手が見た場合、「並列のルールを知らない書き手」という印象を与える可能性があります。社外向けの正式な案内文やプレスリリース、契約関連文書では、単純な並列には「及び」を使うのが無難です。

Q2:3つの要素を並べるとき、「A及びB及びC」と重ねて書いても良いですか?
A2:誤りではありませんが、現代の公用文表記としては悪文とみなされます。日本語の正式な並列ルールでは、「A、B及びC」のように、最後の接続箇所にのみ「及び」を配置し、それ以前の語句は読点で繋ぐのが原則です。

Q3:「並びに」を使わずに文章を分かりやすく整理する方法はありますか?
A3:並列の階層が深くなり「大並びに」や「小並びに」が必要になる複雑な条文は、箇条書き(号分け)に再構成するのが最も効果的です。視覚的にインデントを下げてグループ分けを示すことで、接続詞の階層に依存せず、誰にとっても読み間違いのない文書に仕上がります。

「及び」と「並びに」の使い分けは、細かな文法上のこだわりにとどまらず、文書の論理構造を明快にするための合理的なツールです。「基本は及び」「グループを束ねるときだけ並びに」という大原則を押さえておくだけで、作成する企画書や契約書の説得力は格段に跳ね上がります。

言葉の解釈に曖昧さを残さない正確な文書作成は、ビジネスにおける信頼関係を支える強固な土台となります。日々のメール作成やドラフトの推敲時に、ぜひ今回の階層ルールを意識して活用してみてください。

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