英語を学習する中で、多くの人が一度はつまずくのが「try to 動詞の原形」と「try -ing(動名詞)」の使い分けです。どちらも日本語では「やってみる」「〜する」と訳される場面があるため、学校の授業や独学のなかで混同したまま覚えているケースも少なくありません。
しかし、英語ネイティブの頭の中では、この2つはまったく異なる心理状態や状況を描写しています。日常英会話はもちろん、TOEICをはじめとする資格試験やビジネスメールでも、意味の取り違えが致命的なニュアンスのズレを生む原因になり得ます。本稿では、両者の根本的な違いからネイティブ特有の感覚、関連する重要動詞の使い分けまで、現場目線で分かりやすく紐解きます。
【結論】「try to」と「try -ing」の決定的な違いとネイティブの感覚
「try to」と「try -ing」の最大の違いは、「その行為に伴う心理的ハードルの高さ」と「実際に行動を起こしたかどうか」にあります。
学校英語では「try to = 〜しようとする(努力する)」「try -ing = 試しに〜してみる」と機械的に教えられるのが一般的です。これ自体は間違いではありませんが、ネイティブの脳内イメージを理解するとより鮮明になります。
「try to」における視点は、これから向かうべき「高い壁」にあります。何か難しいこと、簡単には達成できないことに対して力を尽くそうとする姿勢を示すため、文脈によっては「頑張ったけれど結局できなかった」という未完了のニュアンスを強く帯びます。一方で「try -ing」は、行為そのものはすでに実行しているのがポイントです。「とりあえず実際にやってみて、効果や反応を確かめる」という軽やかな実験のスタンスを表します。
【意味と例文】「〜しようとする」努力の「try to」を使いこなす
「try to」は、何かしらの困難や障害が存在し、それを乗り越えようと奮闘するシチュエーションで用いられます。
【try to の代表的な例文】
・I tried to open the window, but it was completely stuck.
(窓を開けようとしたが、完全に固まっていて開かなかった。)
・He is trying to quit smoking for his health.
(彼は健康のために禁煙しようと努力している最中だ。)
1つ目の例文のように、「tried to open」と言った時点で、話し手は「窓を開けるために力を込めて格闘した」情景を想起しています。結果として開かなかったという結末と非常に相性が良いのが「try to」の特徴です。TOEICのリーディング問題などでも、困難な業務課題に取り組む場面(例:We are trying to reduce production costs.)で頻繁に登場します。
【意味と例文】「試しに〜してみる」気軽な「try -ing」のリアルな用法
対する「try -ing」は、行動自体に大きな困難は伴いません。行為そのものは容易に完遂できるものの、「それを実行することで何が起こるか試してみる」という文脈で使われます。
【try doing(-ing)の代表的な例文】
・If you have a headache, try drinking some water.
(頭痛がするなら、試しに水を飲んでごらん。)
・I tried pressing the reset button, and the PC started working again.
(リセットボタンを試しに押してみたら、PCが再び動き出した。)
水を飲むことやボタンを押すこと自体は、誰でも一瞬でできる簡単な行為です。その簡単なアクションを「解決策の一つとして実験的に実行する」ときに選ばれるのが動名詞の形です。相手に軽いアドバイスや提案を持ちかける日常会話でも、「Try searching online.(ネットで検索してみてよ)」のように極めて自然に使われます。
【英語文法の本質】不定詞(to V)と動名詞(V-ing)の直感的な見分け方
この使い分けの本質は、「try」という単語だけにとどまらず、英語文法における「不定詞(to 不定詞)」と「動名詞(-ing)」が持つ根本的なコアイメージに直結しています。
不定詞の「to」は、前置詞のto(〜へ向かって)と同一起源です。そのため、常に「これから向かう未来の方向性」や「まだ到達していない未完了の動作」、あるいは「到達しようとする意志やプレッシャー」を連想させます。これが「try to」に「困難に向かって努力する」というニュアンスを与える理由です。
反対に動名詞の「-ing」は、現在進行形にも使われる通り「目の前で現実に起きている情景」や「生き生きとした過去の体験」を描き出します。頭の中の観念ではなく、すでに身体を動かして「実際にやっている」感覚を伴うため、「try -ing」では「まずは実際に行為に着手してみる」という意味合いが生まれます。
【類語の罠】remember / forget / stop の使い分け総整理
「不定詞=これからの未来・未実行」「動名詞=過去の事実・実行済み」という明確な時間軸のルールを理解すると、試験や実務で頻出する他の重要構文も一気にクリアになります。
1. remember to / remember -ing
・remember to do:忘れずに(これから)〜する(未来へのタスク)
・remember doing:(過去に)〜したことを覚えている(体験の記憶)
2. forget to / forget -ing
・forget to do:(これから)〜するのを忘れる(やり忘れた)
・forget doing:(過去に)〜したことを忘れる(やった記憶が抜けている)
3. stop to / stop -ing
・stop to do:(別のことをするために)立ち止まる・手を止める
・stop doing:(これまで続けていた行為そのものを)やめる・中止する
特に「stop」に関しては、「stop to smoke(タバコを吸うために立ち止まる)」と「stop smoking(禁煙する)」で180度意味が変わってしまうため、正確な把握が欠かせません。
【TOEIC・実践英語】文脈で見抜く出題パターンとビジネスでの落とし穴
TOEICリスニングのPart 3/4やリーディングのPart 5/6において、この構文の識別はスコア直結のポイントです。
ビジネスの場面で上司や取引先に対して「システム改善のために新しい手法を試してみます」と伝えたい場合、「We will try using the new software.」と表現すれば「試験導入として実際に使ってみる」という前向きなアクションになります。
ところが、ここで「We will try to use the new software.」と言ってしまうと、相手には「そのソフトの導入は難易度が高く、使いこなせるか怪しいが、なんとか努力してみる」という後ろ向き・苦戦のニュアンスが伝わってしまうリスクがあります。文法的な正誤だけでなく、ビジネス上の信頼感にも関わる重要な使い分けです。
【try toとtry -ing】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「try and 動詞の原形」という表現も聞きますが、これはどちらの意味ですか?
A1:口語(カジュアルな会話)でよく使われる「try and do」は、文法的には「try to do(〜しようとする)」とほぼ同義です。「Try and see(見てごらん)」「I'll try and call him(彼に電話してみるよ)」のように、親しい間柄の会話で好まれますが、フォーマルなビジネス文書では「try to」を使用するのが原則です。
Q2:否定形「try not to」と「not try to」で意味はどう変わりますか?
A2:「try not to do」は「〜しないように努力する(例:I tried not to laugh. 笑わないようにこらえた)」という意味になり、自制心を働かせている状態を指します。一方、「not try to do」は「〜しようとすらしない(例:He didn't try to help. 彼は助けようともしなかった)」となり、努力そのものを放棄しているニュアンスになります。
Q3:TOEICの文法問題で瞬時に見分けるコツはありますか?
A3:空欄の前後にある文脈を読み取り、「困難の克服(トラブルシューティング、目標達成など)」なら「to 不定詞」、「代替案の提示(〜してみてはどうですか?など)」なら「動名詞(-ing)」を選びます。文脈中に「failed to」「difficult」などの単語があれば「try to」のシグナルであることが大半です。
「try to」と「try -ing」の差異は、単なる丸暗記の知識ではなく、話し手が置かれている状況や心理的な温度感を映し出すリアルな表現技法です。「困難に立ち向かう努力のto」と「軽やかに実際に行動してみる-ing」。このシンプルなイメージの軸さえ持っていれば、文章を読む際も、自ら英語を発信する際も迷うことはなくなります。
机上の文法学習にとどまらず、実際のニュース記事やビジネスシーンでの使われ方にアンテナを張り、ネイティブの生きたニュアンスを体感してみてください。