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馬の歯で年齢がピタリ判明?意外な本数と削る理由・驚きの構造を解説

夏目 恋 夏目 恋 • 更新: • 公開: • 読了約 9 分
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競馬場や乗馬クラブで馬と触れ合う際、ふと馬が口を開けた瞬間を目にしたことはないだろうか。古くから馬の世界には「馬齢を見るには口を見よ」という格言が存在するように、馬の口内には人間の常識とは大きくかけ離れた驚くべき生態とメカニズムが隠されている。

実は馬の歯は、年齢によって形やすり減り方が劇的に変化するだけでなく、生涯にわたって成長し続けるという特殊な性質を持つ。なぜオスとメスで歯の本数が異なるのか、なぜ定期的にやすりで削らなければ命に関わるのか。競馬ファンから愛馬家まで知っておきたい、奥深い馬の歯の真実に迫る。

【歯鑑査の秘密】なぜ歯を見るだけで馬の年齢がピタリとわかるのか?

馬の歯

馬の売買や競走馬の登録において、古来より極めて重視されてきたのが「歯鑑査(しかんさ)」と呼ばれる歯齢判定だ。獣医師や熟練のホースマンは、馬の口元をわずかに開いて前歯(切歯)を確認するだけで、その馬が何歳何カ月であるかを正確に見極める。

判定の最大のカギとなるのが、切歯(門歯)の生え変わり時期と「黒窩(こくか)」の消失だ。馬は生後まもなく乳切歯が生え、2歳半から4歳半にかけて永久歯へと順番に生え変わる。永久歯の噛み合わせ面には「黒窩」と呼ばれるくぼみ(インファンディビュラム)が存在するが、硬い牧草を毎日すり潰すことで徐々に摩滅し、一定の年齢に達すると完全に消滅する。

さらに年齢が進むと、上顎の第3切歯の表面に「ガルベインの溝(ガルベイン溝)」と呼ばれる縦の溝が現れる。この溝は10歳頃に歯の付け根から出現し、15歳頃で歯の中央に達し、20歳頃に歯の先端まで伸びる。歯の形状自体も若い頃の横長の楕円形から、年齢を重ねるにつれて三角形、そして縦長の楕円形へと変化していく。これらの摩耗パターンは規則正しく進行するため、歯を見れば確実な年齢特定が可能となる。

【オスとメスで本数が違う?】馬の歯列構造と知られざる歯の秘密

人間の永久歯は親知らずを含めて最大32本だが、馬の永久歯はオスで40〜44本、メスで36〜40本と、性別によって本数が異なる珍しい特徴を持っている。

この差を生み出しているのが「犬歯(タスク)」の有無だ。野生時代の名残として、オスは群れを守るための闘争用として4本の鋭い犬歯を持つが、メスには基本的に犬歯が生えない(痕跡程度に現れる個体も稀に存在する)。

馬の歯列構造は非常に合理的かつ機能的だ。前方の「切歯(上下各6本、計12本)」で草を鋭く噛み切り、奥深くにある巨大な「臼歯(上下左右各6本、計24本)」ですり潰す。興味深いのは、切歯と臼歯の間に「歯槽間隙(しそうかんげき)」と呼ばれる歯の生えていない広大な隙間が存在する点だ。人間はこの解剖学的な隙間に「ハミ(銜)」を装着することで、馬の舌や口を傷つけることなく手綱の指示を伝える技術を確立した。

【生涯伸び続ける歯】なぜ馬の歯を定期的に削る必要があるのか?

ウサギやネズミなどの齧歯類と同様に、馬の歯は「高冠歯(こうかんし)」という構造を持ち、骨の中に長い歯根を蓄えながら年間約2〜3ミリメートルのペースで一生涯伸び続ける。

野生下では、ケイ素を多く含む硬い野草や小石混じりの地面から草を食べることで、伸びるスピードとすり減るスピードが自然に均衡を保っていた。しかし、管理飼育されている現代の馬は、柔らかく加工された配合飼料や栄養価の高い乾草を主食としている。その結果、摩滅が追いつかず、あるいは咀嚼の癖によって偏ったすり減り方を起こしてしまう。

馬の上顎は下顎よりも幅が広いため、咀嚼運動を繰り返すうちに上顎の外側と下顎の内側の歯先がナイフのように鋭利に尖る「エッジ(不正咬合)」が形成される。これを放置すると、鋭くなった歯が頬の内側の粘膜や舌を容赦なく切り裂き、激痛による摂食障害や化膿を引き起こす。そのため、定期的にやすりで鋭角部分を削り落とす「フローティング」という処置が絶対に欠かせない。

【走りに直結】「狼歯(ウルフティース)」の抜歯と口内トラブル

競走馬や競技馬にとって、口内のコンディションはアスリート生命に直結する。特に問題視されるのが「狼歯(ろうし/第1前臼歯)」の存在だ。

狼歯とは、奥歯の最前列の手前に生えてくる小さく退化した歯で、すべての馬に生えるわけではない。しかし、ちょうどハミが当たる位置に生えるため、騎手が手綱を引いた瞬間にハミが狼歯に激突し、馬に激痛を与える。痛みを感じた馬は指示に反抗して首を振ったり、口を開けてハミを受け入れなくなったり(ハミ受け不良)、本来のスピードを発揮できなくなる。そのため、競走馬として本格的な調教に入る1〜2歳の段階で、痛みの原因となる狼歯をあらかじめ抜歯するのが競馬界の標準的な処置となっている。

【危険信号を見逃すな】馬が見せる口内トラブルのサイン

馬は草食動物であるため、捕食者に弱みを見せないよう痛みを限界まで隠す本能がある。しかし、口内に深刻な病変や不正咬合が生じている場合、日常の行動に明確なSOSサインが現れる。

最も典型的な症状が「クイドロップ(飼い葉こぼし)」だ。奥歯の痛みや口内炎のせいで食物を十分に噛み潰せず、口からボロボロと食べこぼしてしまう現象を指す。未消化の粗い繊維が便に混ざったり、口臭がきつくなったり、片側の鼻から膿のような鼻水が出る(副鼻腔炎の併発)ケースも多い。

騎乗時においては、「ハミを嫌がって頭を高く上げる」「右や左の特定の方向ばかり向きたがる」「舌をハミの上に出してしまう(舌越し)」といった悪癖として表れる。これらは性格の悪さではなく、歯の激痛から逃れようとする必死の抵抗であることが大半だ。

【プロフェッショナルの技術】「馬歯科医」の役割と現代の口腔ケア

欧米では古くから独立した専門職として確立されているのが、馬の口腔ケアに特化した「馬歯科医(エキワイン・デンティスト)」だ。近年、日本国内の競馬場や乗馬クラブでも専門的な口腔ケアへの意識が飛躍的に高まっている。

治療現場では、まず「開口器」と呼ばれる特殊な金属器具で馬の口を大きく開けた状態に固定し、ライトで口腔内の最深部まで入念にチェックする。専用の電動やすりやダイヤモンドコーティングされた手動ラスプを用い、奥歯の段差や尖ったエッジを滑らかに整えていく。

適切なオーラルケアを受けた馬は、咀嚼効率が劇的に向上して栄養の吸収が良くなり、毛ヅヤや筋肉の付き方が見違えるように改善する。さらにハミからの微細なプレッシャーをストレスなく受け入れられるようになるため、レースや馬術競技におけるパフォーマンス向上に直結するのだ。

【馬の歯】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:馬の歯は何歳まで生え変わりが続きますか?
A1:乳歯から永久歯への生え変わりは、生後2歳半頃の前歯(中央の切歯)から始まり、5歳頃にすべての永久歯が生え揃って完了します。それ以降は新しく生え変わることはなく、既存の永久歯が少しずつ伸びながら一生をかけてすり減っていきます。

Q2:馬の歯を削るとき、馬は痛がらないのでしょうか?
A2:歯の伸びている外側や噛み合わせ面の尖った部分には神経が通っていないため、やすりで削る行為自体に痛みはありません。ただし、口を大きく開け続けたり器具の振動を怖がったりすることがあるため、安全のために軽い鎮静薬を投与してリラックスさせた状態で施術するのが一般的です。

Q3:高齢になった馬の歯はどうなるのですか?
A3:馬が20代後半から30代の高齢に達すると、骨の中に蓄えられていた歯根が完全に外へ出尽くし、最後は歯が抜け落ちてしまいます(寿命歯)。奥歯が抜けた老馬は乾草をすり潰せなくなるため、配合飼料をお湯でふやかしてペースト状にした特別食を与えるなど、手厚い介護ケアが必要になります。

馬の歯は単に食べ物を食べるための道具にとどまらず、その年齢を正確に物語る歴史の記録であり、アスリートとしてのポテンシャルを左右する極めて重要な器官だ。

性別による本数の違い、一生伸び続ける高冠歯の特性、そしてハミを通じた人間とのコミュニケーションを可能にする独自の歯列構造。どれ一つをとっても、馬という動物が過酷な自然界を生き抜き、人間と深い絆を結んできた進化の軌跡が見て取れる。

競馬のレースや乗馬を観戦する際は、ぜひ馬たちの口元の動きやハミ受けの様子にも注目してみてほしい。そこには、馬とホースマンが積み重ねてきた緻密な健康管理のドラマが確かに息づいている。

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リーグ公式記録とクラブ発表を出典とし、選手の発言は会見の逐語録に基づいて引用します。確認できない噂は扱いません。

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