メガヒットカーアクションの集大成として全世界を熱狂させた『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(原題:F9)。シリーズを重ねるごとにスケールアップを続ける本作ですが、ファンの視線を釘付けにしたのは何と言ってもスクリーン狭しと暴れ回るカスタムマシンの数々です。過去作へのオマージュから前代未聞の奇想天外なギミックまで、車好きのツボを容赦なく突く演出が詰め込まれました。
なかでも、主人公ドムの象徴であるチャージャーの驚異的な魔改造や、奇跡の復活を果たした人気キャラクター・ハンが駆る新たな愛車など、映画公開から時を経た現在もファンの間で熱く語り継がれる名車が目白押しです。本稿では、劇中を彩った主要マシンたちのスペックや制作秘話、カスタムの見どころを余すところなくお届けします。
【ドムの新たな怪物】ミッドシップ化された1968年型ダッジ・チャージャーの衝撃スペック
ドミニク・トレット(ドム)といえば黒のダッジ・チャージャーですが、本作に登場した1968年型ダッジ・チャージャー「ヘルシャス(Hellacious)」は過去のカスタムとは一線を画す異次元の変貌を遂げています。最大のトピックは、本来フロントに鎮座するはずの巨大なパワーユニットが運転席の真後ろ、すなわちミッドシップにマウントされている点です。
この特注マシンをビルドしたのは、アメリカ・ウィスコンシン州の名門カスタムビルダー「スピードコア(SpeedKore Performance Group)」。カーボンファイバーを惜しみなく投入したワイドボディの内部には、6.2リッターV8スーパーチャージャー「ヘルキャット」エンジン(最高出力707馬力)が収まり、キャビンとエンジンベイをガラスパネルで隔てるスーパーカースタイルを採用しています。さらにトランスミッションにはランボルギーニ・ガヤルド用の6速マニュアル(ゲート式)を流用。エキゾーストノートの轟音と洗練されたメカニズムが融合した、ドムの歴史上最も獰猛かつ美しい劇中車カスタム仕様といえます。
【ハンの復活と魂の継承】なぜGRスープラなのか?オレンジ×黒に込められた意味
シリーズファン最大のサプライズとなったのが、死んだと思われていたハンの電撃復帰です。彼が操るマシンとして選ばれたのは、鮮やかなサンセットオレンジにブラックのグラフィックを纏った2020年型 トヨタ・GRスープラでした。映画公開当時、多くのファンが「なぜスープラなのか?」と息を呑みましたが、このカラーリングを見れば答えは明白です。
この配色は、第3作『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』でハンが駆り、悲劇の炎に包まれたヴェイルサイド仕様のマツダ・RX-7(FD3S)への直接的なオマージュ。スープラにはヴェイルサイド製を彷彿とさせるアグレッシブなエアロキットが組み込まれ、3.0リッター直列6気筒ツインターボエンジンは過激なチューニングによってストリートでの機動力を極限まで高めています。ハンの飄々としたドライビングスタイルと現代屈指のリアルスポーツカーが織りなすドリフトシーンは、まさにファン待望の瞬間でした。
【兄弟対決の象徴】宿敵ジェイコブが駆る2016年型フォード・マスタングGT
ドムの実弟であり、凄腕のスパイ兼暗殺者として立ちはだかるジェイコブ・トレット。アメリカン・マッスルを愛するトレット家の血筋を象徴するように、彼がチョイスしたのは2016年型 フォード・マスタングGTでした。チャージャー(モパー)を駆るドムと、マスタング(フォード)を駆るジェイコブという構図は、アメリカンV8の永遠のライバル対決をスクリーン上に再現した見事な演出です。
ジェイコブのマスタングは、全身をマットグレーで覆い、特注のカーボン製フロントスプリッターやボンネットスクープを備えたスパルタンな仕上がり。5.0リッターV8コヨーテエンジンにスーパーチャージャーを装着し、推定出力は600馬力オーバーを誇ります。エディンバラの市街地や山岳地帯を舞台に、磁石兵器の罠を掻い潜りながら繰り広げられた兄弟の超絶チェイスは、息をのむ大迫力を見せつけました。
【規格外の破壊力】宇宙へ飛んだロケット搭載フィエロと超巨大装甲車「アルマジロ」
今作のぶっ飛び要素を語る上で欠かせないのが、テズとローマンが乗り込んだ1984年型 ポンティアック・フィエロです。『TOKYO DRIFT』組のショーンたちが開発したこの実験車両は、ミッドシップレイアウトの小型ボディに本物の宇宙開発用ロケットエンジンをマウント。ロールケージを張り巡らせ、最終的に大気圏外へと飛び立つという、映画史に残るクレイジーな名シーンを生み出しました。
一方、物語のクライマックスで立ちはだかるのが、敵組織が操る超巨大装甲車「アルマジロ(Armadillo)」です。映画制作者の手によってメルセデス・ベンツ・ウニモグなどの重機シャーシをベースに約4ヶ月かけて完全新設計されたこのモンスターマシンは、全長約10メートル、車重約26トンという圧倒的なスケールを誇ります。強力な電磁石を搭載したドムたちのマシンと、街中のあらゆる障害物を踏み潰しながら突き進むアルマジロとの物理限界を超えたバトルは圧巻の一言です。
【ロンドン市街地から密林まで】ノーブルM600やレティのYZ450Fなど注目マシン総覧
主役級のマシン以外にも、個性が際立つ劇中車が随所に登場し、スクリーンを華やかに彩っています。
- ノーブル・M600(クイーニーの愛車): ショウ兄弟の母マグダレーン(クイーニー)がロンドン夜景のなかで優雅かつ凶暴なドリフトを披露した英国製スーパーカー。4.4リッターV8ツインターボ(650馬力)を搭載した希少なハンドメイドマシンです。
- ヤマハ・YZ450F(レティのオフロードバイク): 密林地帯での激戦において、ドムの妻レティが駆った本格4ストロークモトクロッサー。軽快なフットワークと高い走破性で地雷原を駆け抜けました。
- 1974年型 シボレー・ノバ(レティのバトルマシン): マグネット兵器を搭載し、エディンバラ市街地で敵の護衛車両を磁力で吸着・破壊した無骨なアメ車。レティのハードボイルドなドライビングが光ります。
- アポロ・インテンサ・エモツィオーネ(IE): オットーのパーティー会場前に展示されていた超高額ハイパーカー。最高出力780馬力のV12自然吸気エンジンを積み、世界限定10台のみ製造された幻の名車です。
【ワイスピ ジェットブレイク 車】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ドムが乗るミッドシップ・チャージャーは市販されているのですか?
A1:完全なワンオフ(特注)カスタムカーであり、一般市販はされていません。アメリカの有名ビルダー「SpeedKore」が映画のために巨額の費用と期間を投じてフレームからビルドした実車です。
Q2:ハンのGRスープラは実車が走行して撮影されたのですか?
A2:はい、実際に走行可能な車両が複数台制作されました。精密なスタント走行用、牽引撮影用、破壊シーン用など、用途に合わせて複数のスープラが現場に投入されています。
Q3:ロケットカーのベースに「ポンティアック・フィエロ」が選ばれた理由は?
A3:フィエロはアメリカ車としては珍しいリヤミッドシップ構造を持ち、低価格でユニークなチューニングベースとしてカルト的人気があるためです。「奇妙な科学実験にぴったりな車」として制作陣の遊び心から選定されました。
どれほどCG技術が発達しても、『ワイルド・スピード』シリーズの根底に流れるのは「本物の車を本気で走らせ、激突させる」という現場主義のクラフトマンシップです。『ジェットブレイク』に登場した車たちは、単なる移動手段や小道具ではなく、登場人物のバックボーンや生き様を雄弁に物語るもう一人の主役でした。
ドムのミッドシップ・チャージャーに込められた伝統と革新、ハンのGRスープラが象徴する絆の物語など、マシンの背景にあるストーリーを知ることで、本編のドライブシーンは何倍にもエモーショナルに映るはずです。配信やディスクで鑑賞する際は、ぜひ各車のディテールや重厚なエキゾーストサウンドに耳を傾けてみてください。