首都圏第2位の人口約920万人を擁する神奈川県。蛇口をひねれば当たり前のように清らかな水が流れ出ますが、その命の水を供給している「神奈川県の水がめ」の実態を正確に把握している人は多くありません。大消費地を抱えながらも、なぜ神奈川は他県に比べて深刻な水不足に陥りにくいのか、その強さの秘密は県内に張り巡らされた巨大ダム群と高度な送水システムにあります。
東日本屈指の規模を誇る宮ヶ瀬ダムをはじめ、相模湖、津久井湖、丹沢湖といった主要ダムの現在の貯水率状況から、かつての渇水の歴史、そして水源林を守る取り組みまで、日々の生活を根底から支える神奈川の水インフラ最前線を徹底解剖します。
【神奈川の水がめはどこ?】900万人を支える相模川水系と酒匂川水系の全体像

「神奈川県の水がめはどこにあるのか?」という問いに対し、単一のダムや湖だけを挙げることはできません。神奈川県の水道水は、主に「相模川水系」と「酒匂川(さかわがわ)水系」という2大河川に建設された複数のダム湖群によって支えられています。
東京都など多くの自治体が利根川水系をはじめとする県外水源に大きく依存しているのに対し、神奈川県は水道水の自己水源比率が約9割に達します。この圧倒的な自立性を実現しているのが、神奈川県企業庁が管理・運用する高度な広域水道インフラです。
相模川水系には「相模ダム(相模湖)」「城山ダム(津久井湖)」「宮ヶ瀬ダム(宮ヶ瀬湖)」が配置され、酒匂川水系には「三保ダム(丹沢湖)」が鎮座しています。これら複数の水がめが有機的に連動し、横浜市・川崎市といった大都市部から三浦半島、湘南地域に至るまで、安定した水道水源を途切れることなく送り届けています。
【ダム貯水率と役割】宮ヶ瀬ダム・相模ダム・城山ダムの現状を徹底検証
相模川水系の中枢を担う3大ダムは、それぞれ異なる役割と特徴を持っています。日々のニュースで報じられる神奈川県ダム貯水率速報を読み解く上でも、各ダムの立ち位置を知ることは極めて重要です。
■ 宮ヶ瀬ダム(宮ヶ瀬湖)
2000年に完成した首都圏最大級の重力式コンクリートダム。総貯水容量約2億トンを誇る神奈川の「最大の切り札」です。圧倒的な貯水力で相模川と中津川の水量を巧みにコントロールし、渇水時でも都市部への供給を維持する防波堤となっています。
■ 相模ダム(相模湖)
戦後復興期の1947年に完成した、日本最初期の本格的多目的ダムです。相模川本流の最上流部に位置し、長年にわたり首都圏の水がめとして機能。現在も豊富な水量を受け止め、後背の発電所や下流の浄水場へ安定供給を続ける歴史的水源です。
■ 城山ダム(津久井湖)
相模ダムの下流に位置し、日本初の大規模な純揚水発電(津久井湖と城山発電所を結ぶ発電)を実現した多目的ダム。治水と利水の両面で極めて俊敏な調整機能を持ち、相模川水系のバランスを保つハブの役割を担っています。
2026年現在の貯水率推移を見ても、宮ヶ瀬ダムをはじめとする各施設は計画的な運用が行われており、適正水準を堅守。気候変動による局地的な少雨傾向にも耐えうる万全の管理体制が敷かれています。
【酒匂川の要衝】丹沢湖(三保ダム)が果たす役割と県西部のインフラ基盤
神奈川県の水瓶を語る上で欠かせないもう一つの拠点が、足柄上郡山北町に位置する丹沢湖(三保ダム)です。酒匂川水系河内川に建設された三保ダムは、土や岩を積み上げて造られた美しいロックフィルダムとして知られます。
酒匂川流域からの水道供給は、県西地域(小田原市や南足柄市など)だけでなく、県央・湘南エリア、さらには横浜・横須賀方面へも送水管を通じて届けられています。丹沢湖は豊かな原生林から湧き出るミネラル豊富な水を蓄え、酒匂川の急激な増水・減水を防ぎながら、清冽な水を絶え間なく供給する極めて重責な任務を担っています。
【歴史と教訓】神奈川県を襲った過去の渇水危機と強靭な広域水道ネットワーク
現在でこそ強固な水供給体制を誇る神奈川県ですが、ここに至るまでには幾度もの深刻な渇水被害がありました。
特に昭和48年(1973年)や昭和62年(1987年)、平成6年(1994年)に発生した大渇水では、給水制限や減圧給水が実施され、県民生活や工業活動に甚大な影響を及ぼしました。かつては相模ダムや城山ダムだけに頼っていたため、降雨パターンが偏ると一気に貯水率が枯渇する脆弱性を抱えていたのです。
これらの苦い経験を教訓に建設されたのが宮ヶ瀬ダムであり、さらに相模川水系と酒匂川水系を地下トンネルで結ぶ「導水管ネットワーク(水系の相互融通システム)」です。現在では、片方の水系が渇水に見舞われても、もう一方の水系から瞬時に水を融通できる仕組みが完成。過去の教訓を血肉に変えたインフラ構造こそが、現代の神奈川を渇水危機から守る最大の盾となっています。
【未来へ繋ぐ命の水】丹沢山地の水源林保全活動と森のダム機能
人工的なダム構造物だけでなく、水を育む大自然そのものを守る取り組みも神奈川県の特徴です。県土の北西部に広がる丹沢山地は、まさに天然の巨大フィルターであり「緑のダム」として機能しています。
神奈川県では、全国に先駆けて導入された水源環境保全税などを財源に、「かながわ水源の森林づくり」を推進。荒廃したスギ・ヒノキ人工林の間伐、広葉樹の植樹、シカの食害対策などを官民一体で実施しています。森の土壌が豊かになることで、雨水が地中深く浸透し、時間をかけて浄化された清らかな水がダムへと注ぎ込みます。持続可能な水供給は、丹沢の森を守る地道な保全活動によって支えられています。
【2026年最新レジャー】大迫力の宮ヶ瀬湖観光放流と現地アクティビティ
神奈川の水がめは、都市を守る防災・利水拠点であると同時に、首都圏有数のネイチャー観光スポットとしても高い人気を博しています。なかでも宮ヶ瀬湖の「観光放流」は、圧倒的なスケールを誇るエンターテインメントです。
高低差約70メートル、毎秒30トンもの水がごう音とともに噴き出すダイナミックな放流シーンは息をのむ大迫力。2026年最新シーズンにおいても、春から秋にかけての定期実施日が設定され、多くの観光客や家族連れで賑わっています。湖畔エリアの遊覧船やカヌー体験、周辺のキャンプ場や名物グルメなど、水源地への理解を深めながら自然を満喫できるレジャー環境が整っています。
【神奈川県の水がめ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:神奈川県民が飲んでいる水道水は、具体的にどこから来ていますか?
A1:主に相模川水系(宮ヶ瀬ダム・相模ダム・城山ダム)と酒匂川水系(三保ダム)の水です。県内の浄水場で高度に浄水処理された後、地下の送水管網を通って各家庭や事業所に届けられています。
Q2:東京で水不足がニュースになっている時、なぜ神奈川県は給水制限になりにくいのですか?
A2:東京都が利根川・荒川水系などに依存しているのに対し、神奈川県は県内を流れる相模川・酒匂川水系に巨大な宮ヶ瀬ダムをはじめとする貯水施設を保有しており、水系同士の連絡送水管でバックアップ体制が完成しているためです。
Q3:現在のダム貯水率や放流情報はどこでリアルタイム確認できますか?
A3:神奈川県企業庁の公式ウェブサイトや、国土交通省の「川の防災情報」、相模川水系広域ダム管理連携オフィスの速報ページにて、24時間リアルタイムの貯水率・流入量データが一般公開されています。
普段は何気なく使っている水道水ですが、その裏には相模川・酒匂川の豊かな水脈、宮ヶ瀬ダムをはじめとする巨大インフラ、そして丹沢山地を守る人々の不断の努力が存在します。
激甚化する気候変動や突発的な自然災害に備え、神奈川の水インフラは不断の点検と耐震化、さらなるスマート管理へと進化を続けています。水源地の保全活動やダム施設への来訪を通じて、日頃から「命の水」への関心を持つことが、未来の安心な暮らしを守る第一歩となるはずです。