2024年パリ五輪の狂騒を経て、雪と氷の熱戦が繰り広げられたミラノ・コルティナ2026へとバトンが繋がれた近代オリンピック。世界中のアスリートがしのぎを削る夢の舞台は、いまや単なるスポーツの祭典にとどまらず、開催国の威信、巨額のマネー、そして地球規模のサステナビリティが複雑に交錯する巨大な国際プロジェクトとなっています。
「次はどこの国で開かれるのか」「自分の生きている間に日本で再び開催される可能性はあるのか」――。本稿では、歴代の歩みからすでに決定している未来の開催都市、さらには水面下で繰り広げられる招致合戦のウラ側まで、最新の取材データとIOC(国際オリンピック委員会)の動向を交えて網羅的に解説します。
【次回はどこ?】2026年以降のオリンピック開催地スケジュールと決定都市

直近の大会を終え、ファンの関心は早くもオリンピック次回開催地へと向いています。IOCはすでに2030年代半ばまでの主要大会について、従来の慣例を覆すスピード感で内定・決定を出しました。
まず夏季大会の次回となるのが、アメリカ・カリフォルニア州を舞台とするロサンゼルス五輪2028(2028年7月14日〜7月30日開催予定)です。ロサンゼルスでの開催は1932年、1984年に続き史上3度目となります。1984年大会といえば、商業五輪のビジネスモデルを確立し、税金を投入しない黒字運営で世界に衝撃を与えた伝説の大会です。2028年大会でも新設恒久施設ゼロを掲げ、既存のスタジアムや大学キャンパスをフル活用する方針を打ち出しています。
続く2032年の夏季大会に決定しているのが、オーストラリア第3の都市で開催されるブリスベン五輪2032です。南半球での開催は2016年リオデジャネイロ大会以来、オーストラリア国内としては2000年シドニー大会以来32年ぶりとなります。
一方の冬季大会は、気候変動による雪不足という構造問題を抱えるなか、2030年が「フランス・アルプス地方」、2034年が米ユタ州「ソルトレークシティ」へのダブル内定という形で2024年のIOC総会において承認されました。冬季競技を安定して開催できる寒冷地が世界的に激減するなか、実績とインフラが揃った過去の開催エリアに回帰する傾向が鮮明になっています。
【歴代夏季オリンピック開催国】近代五輪130年の変遷と日本開催の歴史
1896年の第1回アテネ大会から始まった近代五輪の歴史は、戦争による中止や冷戦下のボイコットなど、激動の世界情勢そのものを映し出す鏡でもありました。歴代夏季オリンピック開催国を振り返ると、当初は欧米中心だった舞台が徐々にアジア、南米へと広がりを見せてきた経緯がわかります。
特筆すべきは、アジアで初めてメガイベントを成功させた日本開催オリンピック歴史の歩みです。1964年の東京大会は、戦後復興を象徴する国家的プロジェクトとして東海道新幹線や首都高速道路といったインフラ整備を一気に加速させ、日本の高度経済成長を世界に誇示する契機となりました。
その後、半世紀以上の時を経て開催された2020年東京大会は、新型コロナウイルスの世界的パンデミックによって史上初の1年延期、そして原則無観客という異例の事態に直面しました。パンデミック下の開催強行や経費膨張、さらには大会後の汚職事件発覚など、華やかなスポーツの祭典の裏に潜むガバナンスの課題を日本のみならず世界へ突きつける契機となったことは否定できません。
【冬季オリンピック開催地一覧】雪と氷の祭典が辿った軌跡
1924年のフランス・シャモニー大会から幕を開けた冬季オリンピック開催地一覧を紐解くと、夏季大会以上に開催都市の選定ハードルが高い現実が浮き彫りになります。十分な積雪量と標高差、そして数万人規模を受け入れる宿泊機能が必須となるためです。
日本国内では、1972年にアジア初の冬季五輪となった札幌大会が開催され、日の丸飛行隊のメダル独占など日本中に熱狂を巻き起こしました。1998年には長野五輪が開催され、北陸新幹線の先行開業など信州地域の交通網を劇的に近代化させました。
しかし今世紀に入り、バンクーバー(2010年)、ソチ(2014年)、平昌(2018年)、北京(2022年)と続くにつれ、人工降雪機への過度な依存や生態系破壊への懸念が噴出。持続可能性をどう担保するかが、冬季五輪の存続自体を揺るがす喫緊の課題となっています。
【なぜその街に?】オリンピック開催都市選定理由とIOCの選考改革
かつてオリンピックの招致といえば、候補都市が巨額のロビー活動を展開し、IOC委員による秘密投票で決着をつける「華やかな政治ショー」でした。しかし、この方式は賄賂や不正の温床となり、敗退した都市には莫大な招致経費の焦げ付きだけが残るという深刻な弊害を生み出しました。
こうした批判を受け、IOCはトーマス・バッハ会長主導のもと「オリンピック・アジェンダ2020」を策定。従来の選定方式を完全に解体しました。現在機能しているオリンピック開催都市選定理由の中核は、「将来開催地委員会」による戦略的な対話と選定です。
複数の都市を競わせるのではなく、既存施設が充実し財政基盤の堅固な都市と個別にトップ会談を進め、合意に至った段階でIOC総会決定事項として信任を問うプロセスの導入です。2032年のブリスベン大会や、2034年のソルトレークシティが事実上の単独指名に近い形で早期決定された背景には、招致レースの過熱を防ぎ、確実かつ安全に大会を成立させたいIOCの強い危機感がありました。
【落選の真相】巨額費用と市民の反発が生んだ「五輪離れ」の実態
華やかな招致成功の陰で、世界各地で相次いだオリンピック招致落選の真相を検証すると、共通するキーワードが浮かび上がります。「住民投票での否決」と「財政破綻への恐怖」です。
2020年代に入り、ドイツのミュンヘンやハンブルク、スイスのシオン、オーストリアのインスブルックなど、冬季競技の伝統を持つ欧州の名だたる都市が次々と招致から撤退しました。住民投票にかければ過半数が反対票を投じる事態が相次いだためです。
日本でも、2030年大会を目指していた札幌市が招致を断念した経緯は記憶に新しいところです。2020年東京大会で露呈したオリンピック開催費用と経済効果のアンバランス、組織委元理事らによる汚職事件が世論の不信を決定づけ、市民の合意形成を得られないまま撤退へと追い込まれました。かつて「都市のステータス」だった五輪開催は、いまや市民にとって「将来世代への莫大な借金リスク」と認識される時代へと完全に変容したのです。
【2036年オリンピック立候補都市】サウジ・インド・カタールなど新興国の激突
欧米の先進国が巨額投資に慎重姿勢を強める一方で、次のフロンティアとなる2036年オリンピック立候補都市の争奪戦は、かつてない熱狂を帯びています。主役は「グローバルサウス」と呼ばれる新興国や、オイルマネーを背景に国家改造を急ぐ中東諸国です。
最有力候補の一角と目されるのが、人口世界一となったインド(アーメダバード)です。モディ首相自ら国威発揚と経済成長のショーケースとして2036年大会の誘致を公言し、国家プロジェクトとして突き進んでいます。加えて、FIFAワールドカップを成功させインフラ整備に自信を深めるカタール(ドーハ)や、国家プロジェクト「ビジョン2030」の一環としてスポーツウォッシング批判を跳ね返そうとするサウジアラビアも虎視眈々と機会をうかがっています。
加えて、トルコのイスタンブール、インドネシアの新首都ヌサンタラ、エジプトの新行政首都など、自国の台頭を誇示したい国々が相次いで関心を表明。気候変動による酷暑対策として「秋季開催(10月〜11月開催)」を受け入れるかどうかも含め、IOCの判断に世界の注目が集まっています。
【オリンピック開催地一覧】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:次回の夏季オリンピックはいつ、どこで開催されますか?
A1:次回の第34回夏季オリンピックは、2028年にアメリカのロサンゼルスで開催されます。期間は2028年7月14日から7月30日までを予定しており、同市での開催は1984年以来44年ぶり3回目となります。
Q2:これまで日本でオリンピックが開催された都市と回数は?
A2:日本国内では過去に計4回のオリンピックが開催されました。夏季大会が東京で2回(1964年・2020年大会=実開催2021年)、冬季大会が札幌(1972年)と長野(1998年)で各1回ずつ実施されています。
Q3:なぜ最近は開催地決定のニュースが以前より数年も早くなっているのですか?
A3:IOCが選考プロセスを刷新したためです。従来の「開催7年前に総会の一斉投票で決定する方式」では、立候補都市の撤退が相次ぎ開催危機に陥った教訓から、現在は優良な提案を行う都市と水面下で早期に対話を進め、10年以上先の大手都市でも迅速に内定を出す方式へ変更されました。
近代オリンピックは現在、130年の歴史上でもっともドラスティックな転換期に立たされています。かつてのように「白紙の土地に巨大スタジアムを乱立させる」時代は完全に終焉を迎えました。ロサンゼルス2028やブリスベン2032に見られるように、既存の都市機能をいかに無駄なく使い、大会後も地域社会に負担を残さないかという「持続可能性(サステナビリティ)」こそが選定の絶対条件となっています。
その一方で、2036年大会をめぐる新興国の猛烈なアプローチは、五輪が今なお世界最強のソフトパワー装置であることを証明しています。スポーツの純粋な感動を守りつつ、地球環境と経済合理性のバランスをどう取るのか。次に発表される開催都市の動向は、私たちがどのような未来を選択するのかという、国際社会の価値観そのものを映し出すことになりそうです。