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坂本龍一さん壮絶ながん闘病の真実|直腸がんステージ4と遺作への執念

黒田 大河 黒田 大河 • 更新: • 公開: • 読了約 7 分
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世界的音楽家・坂本龍一さんが71歳で旅立ってから時が流れた現在も、彼が遺した革新的なサウンドと生き様は世界中のリスナーの心を揺さぶり続けています。イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)での世界的な躍進、映画『ラストエンペラー』での日本人初となる米アカデミー賞作曲賞受賞など、常に時代の最先端を走り抜けた希代のマエストロでした。

しかし、その華々しいキャリアの晩年は、幾度となく押し寄せる病魔との過酷な戦いの連続でもありました。中咽頭がんの克服から、突如突きつけられた直腸がんステージ4の宣告、そして幾度におよぶ大手術。絶望的な状況に直面しながらも、なぜ彼は最後の瞬間までピアノに向かい、音を紡ぎ続けることができたのか。関係者の証言や自ら書き残した手記から、知られざる闘病の全貌を紐解きます。

【闘病の経緯】中咽頭がん克服から直腸がんステージ4発覚までのタイムライン

坂本龍一がん

坂本龍一さんが最初にがんの告知を受けたのは2014年6月のことでした。喉の違和感から検査を受けた結果、中咽頭がんと診断されます。当時予定されていたすべての演奏活動を休止し、放射線治療と抗がん剤治療に専念。放射線による口内炎や味覚障害などの激しい副作用に苦しみながらも、約1年間の療養を経て寛解に至り、映画『レヴェナント: 蘇えりし者』の劇伴制作で見事な復帰を果たしました。

しかし、試練はそれだけにとどまりませんでした。寛解から約5年が経過した2020年12月、定期検診の際にニューヨークの病院で直腸がんが発見されます。さらに日本に帰国して精密検査を受けたところ、病変はすでに肝臓やリンパ、肺へと転移しており、医師からは「何もしなければ余命半年」と宣告される極めて厳しいステージ4の状態でした。

【過酷な手術と治療】名医による20時間の大手術と転移の理由

直腸がん発見当時、すでに他臓器への遠隔転移が進んでいた背景には、がん細胞が血液やリンパ液の流れに乗って主要臓器へ微小転移していたことが挙げられます。標準治療の限界に直面するなか、坂本さんは日本国内の信頼できる外科医陣に命を託す決断を下しました。

2021年1月に実施された手術は、原発巣である直腸の切除に加え、肝臓に転移した腫瘍とリンパ節を同時に摘出する総計20時間におよぶ大手術となりました。その後も両肺に転移したがんを取り除くため、複数回にわたる切除手術を敢行。体に残された体力と相談しながら、局所麻酔と全身麻酔を繰り返し、最終的に受けた手術は大小合わせて計6回に達しました。

術後の激しい痛みや投薬による倦怠感、食事制限など、日常のあらゆる動作が制限されるなかでも、坂本さんは主治医や医療スタッフへの感謝を常に忘れず、淡々と自らの身体のデータを観察する客観性を保ち続けていました。

【新潮の手記と遺作】日記に綴られた生への葛藤と映画『Opus』への執念

過酷を極める病床において、坂本さんの創作意欲は衰えるどころか、より純度の高い研ぎ澄まされたものへと昇華していきました。文芸誌『新潮』において、自伝の続編となる手記『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』を連載。がん宣告の瞬間の心境や家族への思い、死生観を飾らない言葉で赤裸々に綴り、多くの読者に深い感銘を与えました。

加えて、闘病中の日々のスケッチのように音を記録したアルバム『12』の発表や、NHKのスタジオで数日間にわたり渾身の力を振り絞って収録されたモノクロのコンサート映画『Opus』の撮影を敢行。「これが最後の演奏になるかもしれない」という極限の覚悟のなか、かつてYMO時代に世界を熱狂させた名曲や『ラストエンペラー』の旋律を、1音1音祈りを込めるようにピアノへ刻み込みました。

【家族の支えと最期の言葉】娘・坂本美雨が明かした最期の時間と葬儀

命の灯火が静かに小さくなっていく最期の日々を支えたのは、パートナーをはじめとするごく親しい家族の存在でした。ミュージシャンで長女の坂本美雨さんは、父の逝去後に「父はずっと、私たちのなかに音楽として生き続けている」と深い哀悼と敬愛のコメントを発表。病室でも音楽が絶え間なく流れ、家族が手を握りながら穏やかな時間を共有していたことが明かされています。

2023年3月28日、都内の病院で71年の生涯に幕を閉じました。死因は直腸がんでした。生前の坂本さんの強い希望により、告別式や葬儀は近親者のみの家族葬として静かに執り行われました。

公式発表の結びには、坂本さんが終生愛した古代ローマの詩人・セネカの格言として知られる一節が記されていました。

「Ars longa, vita brevis(芸術は長く、人生は短し)」

命の有限性を誰よりも深く自覚しながら、自らの命を削って永遠に残る芸術を追い求めた坂本さんの姿勢を、象徴する最期のメッセージとなりました。

【坂本 龍一 が ん】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:坂本龍一さんが患ったがんの病名とステージは何でしたか?
A1:2014年に「中咽頭がん」を発症(後に寛解)し、2020年末に「直腸がん」と診断されました。直腸がんは発見時点で肝臓やリンパ、両肺への転移が見られるステージ4(末期がん)でした。

Q2:闘病生活を記録した本や手記は出版されていますか?
A2:文芸誌『新潮』で連載された手記をまとめた自伝『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(新潮社)が出版されています。がん発覚から最晩年の創作活動に至るまでの心境が詳細に記されています。

Q3:最期に遺された音楽作品にはどのようなものがありますか?
A3:闘病中の日記のように紡がれたオリジナルアルバム『12』や、病を押して自らピアノを弾き切ったコンサート映画『Opus』が代表的な遺作として世界中で高い評価を受けています。

坂本龍一さんの闘病生活は、単なる病魔との戦いという枠を超え、人間がいかに尊厳を持って生き、最期の瞬間まで自らの使命を全うできるかという根源的な問いへの答えそのものでした。

中咽頭がんから直腸がんステージ4へと続く過酷な運命に直面しても、彼は決して絶望に呑まれることなく、ピアノの響き、環境音、そして言葉を通じて世界と対話し続けました。遺された数々の名曲と澄み切ったメッセージは、時代を超えてこれからも多くの人々の心に寄り添い、静かに勇気を与え続けるはずです。

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