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大鏡『花山天皇の出家』品詞分解と訳!道兼の謀略や敬語を徹底解説

星野 楓 星野 楓 • 更新: • 公開: • 読了約 11 分
目次

平安中期の政界を揺るがした大事件を描く『大鏡』の屈指の名場面「花山天皇の出家(花山院の出家)」。最愛の女御を失い傷心する若き天皇に巧みに取り入り、権謀術数によって退位へと追い込んだ藤原道兼の冷徹な謀略は、古典文学屈指のドラマツルギーとして今なお強いインパクトを放っています。

高校の古典授業や大学入試、定期テストでも頻出の超重要単元ですが、複雑に入り組む敬語の識別や助動詞の意味判定、主語の省略に頭を抱える学習者は少なくありません。本稿では、本文の精密な品詞分解をはじめ、藤原道兼が張り巡らせた策謀の背景、テストで問われる文法ポイントや現代語訳を余すところなく整理・解説します。

【背景とあらすじ】花山天皇はなぜ出家したのか?粟田殿(藤原道兼)が仕組んだ謀略の全貌

花山天皇の出家品詞分解

事件が起きたのは寛和2年(986年)6月22日の深夜。当時19歳という若さだった第65代・花山天皇は、寵愛していた女御・藤原忯子(よしこ)の急逝によって深い悲嘆に暮れていました。その精神的動揺に付け込んだのが、右大臣・藤原兼家の三男である粟田殿(藤原道兼)です。

道兼は「自分もお供して共に出家いたします」と甘言を弄し、天皇を内裏から秘密裏に連れ出します。目的地である元慶寺(花山寺)に到着し、花山天皇が無事に剃髪を済ませた瞬間、道兼は「父(兼家)に出家前の姿をひと目見せて別れを告げてまいります」と言い残して逃亡。まんまと騙された天皇は退位を余儀なくされ、兼家の孫にあたる一条天皇(わずか7歳)が即位、兼家が摂政として権力を一握りにしました。これが歴史上名高い「寛和の変」の真相です。

【本文・書き下し文・現代語訳】『大鏡』花山天皇の出家を対比でスピード理解

物語の緊迫感を捉えるため、導入からクライマックスに至る代表的な場面の書き下し文と現代語訳を対照させます。

【書き下し文】
花山院の、御出家入道せさせたまひしことの、忍びてましましけるありさまこそ、いみじくあはれにあさましけれ。粟田殿の惑はし申したてまつりたまひて、夜深く内裏を出でさせたまひけむ折は、月あかくいみじき夜にて、大内山を出づるまでは、晴れ晴れしからぬ御心地にて、いかがはせむとおぼしめしけるを、粟田殿の、「あな心憂。御遅く出でさせたまひては、顕証にもなりはべりなむ。ただ疾くおはしましませ」と、手を引き申したてまつりたまふに……

【現代語訳】
花山院がご出家入道なさった時の、忍び足でお出かけになったご様子は、たいそう心打たれ、またあきれるほど(思いがけないこと)であった。粟田殿(藤原道兼)がだまし申し上げなさって、夜が更けて宮中をお出ましになったであろう時は、月が明るくたいそう美しい夜であって、(天皇は)宮中を出るまでは、晴れ晴れとしないご気分で、どうしようかとお思いになっていたところ、粟田殿が「ああ情けない。お出ましが遅くなられては、人目にも立ってしまうでしょう。ただもう早くお出ましください」と、手をお引き申し上げなさるので……

【完全品詞分解】テスト頻出文の文法・助動詞の意味と活用形を徹底分析

定期テストや個別入試で確実に得点源とするため、最頻出パッセージを単語単位で品詞分解し、活用表と助動詞の意味を詳解します。

例文1:「忍びてましましけるありさまこそ、いみじくあはれにあさましけれ。」

  • 忍び:動詞(バ行四段活用・連用形)
  • て:接続助詞
  • ましまし:本動詞・尊敬語(サ変動詞「まします」・連用形)「お出ましになる」
  • ける:助動詞(過去「けり」・連体形)
  • ありさま:名詞「様子」
  • こそ:係助詞(強意・結びを已然形にする)
  • いみじく:形容詞(シク活用・連用形)「たいそう」
  • あはれに:形容動詞(ナリ活用・連用形)「しみじみと心打たれる」
  • あさましけれ:形容詞(シク活用・已然形)「驚きあきれるほどだ」※「こそ」の結び

例文2:「粟田殿の惑はし申したてまつりたまひて」

  • 粟田殿:名詞
  • の:格助詞(主格「〜が」)
  • 惑はし:動詞(サ行四段活用・連用形)「だます・欺く」
  • 申し:補助動詞・謙譲語(サ行四段活用・連用形)
  • たてまつり:補助動詞・謙譲語(ラ行四段活用・連用形)
  • たまひ:補助動詞・尊敬語(ハ行四段活用・連用形)
  • て:接続助詞

※「申す」「たてまつる」の二重謙譲によって行為の対象(花山天皇)を高め、「たまふ」によって行為の主体(粟田殿)を立てる最高度の敬語構造です。

例文3:「御遅く出でさせたまひては、顕証にもなりはべりなむ。」

  • 御:接頭語
  • 遅く:形容詞(ク活用・連用形)
  • 出で:動詞(ダ行下二段活用・連用形)
  • させ:助動詞(最高敬語・使役ではなく尊敬「さす」・連用形)
  • たまひ:補助動詞・尊敬語(ハ行四段活用・連用形)
  • ては:連語(接続助詞「て」+係助詞「は」)
  • 顕証に:形容動詞(ナリ活用・連用形)「明白に・人目について」
  • も:係助詞
  • なり:動詞(ラ行四段活用・連用形)
  • はべり:補助動詞・丁寧語(ラ変動詞「はべり」・連用形)「〜ます」
  • な:助動詞(強意「ぬ」・未然形)
  • む:助動詞(推量「む」・終止形)「〜だろう・きっと〜してしまう」

【敬語の識別マスター】尊敬・謙譲・丁寧の方向と主語の判定法

古典読解において最も失点しやすいのが敬語の方向(誰から誰への敬意か)の判定です。『大鏡』は語り手(大宅世継・夏山繁樹)が存在するため、地の文の敬意は基本的に「語り手から人物」に向かいます。

敬語の識別ルールを一覧表で整理します。

用例・語句 敬語の種類 敬意の主体(誰から) 敬意の客体(誰へ)
せさせたまふ(最高敬語) 尊敬語+尊敬語 語り手 花山天皇
惑はし申したてまつる 謙譲語+謙譲語 語り手 花山天皇(行為を受ける側)
おはしましませ(会話文) 本動詞(尊敬語) 粟田殿(道兼) 花山天皇
なりはべりなむ(会話文) 補助動詞(丁寧語) 粟田殿(道兼) 花山天皇(聞き手)
まかり出でて(会話文) 本動詞(謙譲語) 粟田殿(道兼) 花山天皇(退出の対象)

道兼は天皇を騙している最中、極めて丁重な敬語を連発しています。この慇懃無礼ともいえる敬語表現が、のちの裏切りをいっそう際立たせる文学的効果を生み出しています。

【重要単語と係り結び】定期テスト・大学入試で差がつく古典文法チェック

文法問題で頻出する係り結びと重要古語を確実にインプットしておきましょう。

1. 強意の係り結び「こそ → 已然形」
本文中「忍びてましましけるありさまこそ、いみじくあはれにあさましけれ」では、係助詞「こそ」を受けて文末が形容詞「あさまし」の已然形「あさましけれ」で結ばれています。文末の形を問う穴埋め問題で定番です。

2. 疑問・反語の「いかがはせむ」
「いかが(副詞:どのように)」+「は(係助詞)」+「せ(サ変動詞・未然形)」+「む(推量助動詞・連体形)」。文脈上、「どうしようか、いやどうしようもない」という天皇の苦悩・反語的ニュアンスを読み解くことが大切です。

3. テスト必出の最重要語句

  • あさまし:驚きあきれるほどだ、思いがけない
  • あはれなり:しみじみと趣深い、心打たれる、気の毒だ
  • 顕証(けんしょう・けむじゃう)なり:あらわだ、人目に立つ
  • 心憂し(こころうし):つらい、情けない、やりきれない
  • まかす:退出させる(使役的表現)

【成立年代と特徴】歴史物語『大鏡』の語り手と構造的魅力

『大鏡』は平安時代後期(白河院政期の12世紀初頭頃)に成立したとされる歴史物語です。文徳天皇から後一条天皇までの14代・約176年間の歴史を扱っています。

本作の最大の特徴は、190歳の大宅世継(おおやけのよつぎ)と180歳の夏山繁樹(なつやまのしげき)という2人の超長寿の老人が昔語りをし、それを若侍が批評・補足するという対話体(座談会形式)を採用している点です。表面上は藤原氏の栄華を賛美しながらも、行間には兼家や道長一族の強引な政権奪取や陰謀に対する痛烈な皮肉と批判精神が隠されており、「花山天皇の出家」はその権力闘争の暗部を浮き彫りにした代表例といえます。

【花山天皇の出家 品詞分解】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:藤原道兼(粟田殿)はなぜ一緒に出家しなかったのですか?
A1:最初から出家する意志は毛頭なく、花山天皇を退位させて父・藤原兼家と自らの一族が政権を掌握するための謀略だったからです。天皇が剃髪した直後、「父に最後の姿を見せる」と嘘をついて逃走し、宮中へ戻って新天皇即位の準備を進めました。

Q2:「出でさせたまひけむ」の「けむ」の文法的な意味と識別は?
A2:助動詞「けむ」の連体形で、意味は「過去推量(〜したのだろう・〜したであろう)」です。語り手である大宅世継が、過去のその場にいなかった出来事を推し量って述べているため、通常の過去「き・けり」ではなく「けむ」が用いられています。

Q3:道兼のセリフ「変らぬ姿今一度見え、まかり出でむ」の品詞分解の注意点は?
A3:「見え」はヤ行下二段動詞「見ゆ」の連用形(「見せる」の意)、「まかり出で」はラ行四段動詞「まかり出づ」の連用形(退出する意の謙譲語)、「む」は意志の助動詞です。「今一度姿を見せてから、(寺へ)戻ってまいりましょう」という天皇を安心させるための偽りの約束を意味します。

『大鏡』の「花山天皇の出家」は、単なる文法問題の題材にとどまらず、平安貴族社会の冷徹な権力闘争を鮮明に切り取った第一級の文学・歴史資料です。

助動詞「けり・き・ぬ・む」の識別や「せさせたまふ」「申したてまつる」といった二重敬語の方向性を正確に捉えられるようになれば、文脈把握の精度は格段に上がります。本稿の品詞分解と現代語訳を手元に置きながら本文を何度も音読し、古典文法の基礎固めと得点力アップに役立ててください。

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