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北朝鮮が太陽に着陸?「夜に行った」デマの元ネタと真相を徹底解剖

夏目 恋 夏目 恋 • 更新: • 公開: • 読了約 8 分
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「北朝鮮が人類史上初めて太陽への着陸に成功した」――。かつて世界中のインターネットやソーシャルメディアを揺るがした、あまりにも衝撃的なニュースをご存じでしょうか。17歳の宇宙飛行士が過酷な熱を避けるために「夜間に出発した」という奇想天外なストーリーは、瞬く間にグローバルな話題となりました。

荒唐無稽極まりない話でありながら、なぜこの情報は世界中で報道され、多くの人々が一瞬でも「北朝鮮ならあり得るかもしれない」と信じてしまったのでしょうか。本稿では、この伝説的な噂の真相をはじめ、海外発デマの元ネタ、当時のネット上の爆発的な反応、そして背後にあるリアルな宇宙開発の実態までを徹底的に検証します。

【発端と真相】「北朝鮮が太陽に着陸」ニュースはなぜ世界中で信じられたのか

北朝鮮太陽着陸

事の発端は、ある海外メディアを通じて突如拡散された「北朝鮮の国営テレビが、自国の宇宙飛行士が太陽への着陸に成功したと発表した」というセンセーショナルなニュースでした。

その信じがたい報道内容は以下のような筋書きでした。

「北朝鮮の17歳の宇宙飛行士であるフン・イル・ゴン(Hung Il Gong)氏が、特別に設計されたロケットに乗り込み、地球から約1億5000万キロ離れた太陽に向けて出発。わずか4時間(記事によっては18時間)で太陽へ到達し、太陽面に着陸して無事帰還した。彼は金正恩総書記(当時は第1書記)から英雄として称賛された――」

太陽の中心温度は約1500万度、表面温度でも約6000度という極限環境です。いかなる最新素材であっても接近すら不可能な天体に人間が降り立つなど、科学的に100%不可能です。しかし、この情報は複数の言語に翻訳され、まるで「北朝鮮が国家的なプロパガンダとして公式に発表した」かのように世界中へ伝播していきました。

【デマの元ネタ】海外風刺サイト発のフェイクニュースが拡散した経緯

結論から言えば、このニュースは海外の風刺サイトが作成した完全なデマ(フェイクニュース)です。

情報の一次ソースとなったのは、アイルランドの有名なパロディ・風刺ニュースサイト『ウォーターフォード・ウィスパーズ・ニュース(Waterford Whispers News)』でした。同サイトは、アメリカの『The Onion』や日本の虚構新聞のように、現実のニュースを誇張したパロディ記事を日常的に発信するジョークメディアです。

記事があまりにも精巧かつユーモラスに書かれていたため、一部の海外アグリゲーションサイトや個人ブロガーが「本物のニュース」として誤認して転載。そこから英語圏のSNS、中東、アジア圏へと事実確認(ファクトチェック)を経ないままネズミ算式に拡散してしまいました。

当然ながら、北朝鮮の公式メディアである朝鮮中央通信(KCNA)や労働新聞が、このような発表を行った記録は過去に一度もありません。

【迷言の誕生】「夜に出発したから太陽でも燃え尽きない」トンデモ設定の裏側

このフェイクニュースが爆発的な拡散を見せた最大の理由は、記事内に仕込まれていた秀逸すぎる「オチ」にありました。

記事中、記者から「太陽の超高温をどうやって克服したのか」と問われた北朝鮮のスポークスマンが、澄ました顔でこう答えたとされていたのです。

「太陽の熱を避けるため、夜に出発・着陸させた」

自ら光と熱を放ち続ける恒星である太陽に「昼と夜」が存在するはずがありません。小学生でも分かる初歩的な天文学の矛盾を、独裁国家が真顔で言い放ったかのように仕立て上げたこのフレーズは、ネットユーザーの爆笑を誘い、ミーム(ネット上の流行ネタ)として語り継がれることになりました。

【日本のネットの反応】5ちゃんねる(なんJ)やTwitterで爆発的なネタに

この怪情報は日本国内にも即座に上陸し、巨大掲示板「5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)」のなんでも実況J(なんJ)やニュース速報VIP、Twitter(現X)などを中心に大反響を巻き起こしました。

当時のネット掲示板やSNSでは、以下のようなツッコミや大喜利が殺到しました。

「夜なら太陽も消灯してるから安心だな」「太陽に夜があるという新理論」「その発想はなかった、天才すぎる」「科学の常識を覆す夜間アタック作戦」など、多くのユーザーは即座にデマだと見抜きつつも、その圧倒的なユーモアをコンテンツとして楽しんでいました。

一方で、まとめサイトなどを通じて見出しだけを目にした一部の読者が「北朝鮮なら本当に言い出しかねない」と真に受けてしまう現象も散見され、ネットリテラシーの観点からも大きな議論を呼びました。

【リアルな宇宙開発】北朝鮮の宇宙開発の実態と軍事利用の現在地

太陽着陸はもちろん荒唐無稽な都市伝説ですが、現実世界における北朝鮮の宇宙開発の実態は、決して笑い事では済まされないシリアスな軍事課題です。

北朝鮮は国家宇宙開発局(NADA、現・国家航空宇宙技術総局)を主導機関とし、人工衛星の打ち上げを名目とした宇宙開発を急速に進めてきました。2020年代以降は、軍事偵察衛星「万里鏡(マリギョン)」シリーズの軌道投入を進めるなど、実質的な弾道ミサイル技術の高度化と表裏一体の宇宙政策を推し進めています。

国際社会からの経済制裁下においても、宇宙関連技術やミサイル開発を着実に進展させている姿は、パロディの「太陽着陸」とは対照的な脅威として現実の国際情勢に影を落としています。

【現代への教訓】なぜ北朝鮮のフェイクニュースや都市伝説は真実味を帯びるのか

なぜ「太陽への着陸」という明白なデマが、これほどまでに信憑性を帯びて流通してしまったのでしょうか。そこには北朝鮮という国家が持つ特異な情報環境が深く関係しています。

北朝鮮は極めて閉鎖的な国家体制を敷いており、国内の実情が外から見えにくい「情報のブラックボックス」です。加えて、公式プロパガンダにおいて指導者を神格化する過剰な演出(「指導者が乗る車に雷が落ちても傷一つなかった」など)が過去に報じられてきた経緯があります。

その結果、「あの国なら、国民向けの洗脳教育としてこれくらい荒唐無稽な嘘を発表してもおかしくない」という人々の確証バイアスが働き、風刺サイトのジョークが現実のニュースへとすり替わってしまったのです。

【北朝鮮の太陽着陸】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:北朝鮮は本当に国営放送で「太陽に着陸した」と公式発表したのですか?
A1:いいえ、公式発表した事実は一切ありません。この話はアイルランドの風刺・パロディサイトが創作した完全なジョーク記事が発端です。

Q2:なぜ「夜に出発した」という設定が付け加えられたのですか?
A2:風刺サイトの記者が「太陽の熱をどう防いだのか」という問いに対するオチとして創作したユーモア表現です。このシュールなボケがネット上でウケたことで、世界中に拡散されました。

Q3:フン・イル・ゴンという17歳の宇宙飛行士は実在しますか?
A3:実在しません。風刺記事の中で作られた架空のキャラクターです。

「北朝鮮が太陽に着陸した」という噂は、海外の風刺ニュースが国境や言語の壁を越えて拡散し、真偽が曖昧なまま一人歩きした典型的なフェイクニュースの事例でした。

笑い話として片付けるのは簡単ですが、情報があふれる現代においては、どれほど奇抜な内容であっても「誰が発信した一次情報なのか」「確かな裏付けはあるのか」を冷静に見極めるリテラシーが常に問われています。

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