ホーム 芸能ニュース・ゴシップ 給与天引きは違法?労使協定による賃金控除の全貌と最新ルール

給与天引きは違法?労使協定による賃金控除の全貌と最新ルール

安藤 澪 安藤 澪 • 更新: • 公開: • 読了約 10 分
目次

毎月の給与明細を確認した際、親睦会費や社宅費、組合費などの名目で天引きされている金額に疑問を持った経験はないでしょうか。あるいは企業側の人事労務担当者として、「従業員の便宜のため」と慣習的に給料から差し引いている項目が、実は法令違反にあたらないか不安を抱くケースも少なくありません。

賃金は労働者の生活を直接支える基盤であるため、労働基準法によって極めて厳格な保護がかけられています。適法な手続きを踏まずに給与から天引きを行った場合、企業は労働基準監督署からの是正勧告や罰則の対象となるだけでなく、未払い賃金トラブルに発展するリスクを孕んでいます。2026年最新の労務管理において必須となる「労使協定に基づく賃金控除」の法意と実務対応を解き明かします。

【大前提】労働基準法第24条「賃金全額払いの原則」と例外規定

労使協定に基づく賃金支払時の控除

労働基準法第24条第1項本文では、「賃金全額払いの原則」が明確に定められています。使用者は労働者に対して、支払うべき賃金の全額を直接支払わなければならず、会社側の都合で勝手に差し引くことは原則として法律で禁じられています。

この原則に対する例外として給料天引きが認められるルートは、法的に次の2パターンのみに限定されています。

1つ目は「法令に別段の定めがある場合」です。所得税や住民税の源泉徴収、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などの社会保険料控除がこれに該当します。これらは法律自体に控除の義務や根拠が明記されているため、個別の労使協定がなくても天引きが可能です。

そして2つ目こそが、実務上「24協定(賃金控除協定)」と呼ばれる「労使協定に基づく賃金支払時の控除」です。事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)と書面による協定を締結している場合に限り、法定外の項目であっても給与からの天引きが適法となります。

給与天引きが認められる対象項目とNG項目の境界線

労使協定を締結すれば、どんな項目でも自由に天引きしてよいわけではありません。行政解釈(通達)において、控除の対象となるのは「購買代金、社宅・寮その他の福利厚生施設の費用、労働組合費など、事理明白なもの」に限定されています。

具体的に認められる主な給与天引きの対象項目は以下の通りです。

・社宅費・親睦会費・社員食堂の食費代などの福利厚生実費
・財形貯蓄金や持株会の拠出金、生命保険料の団体扱い保険料
・労働組合規約に基づく労働組合費の天引き(チェックオフ)
・会社貸付金の返済金や社内預金

一方で、労使協定を結んでいたとしても控除が認められない、あるいは違法と判断される典型例が「業務上の損害賠償金」や「ペナルティ(制裁金)」の天引きです。たとえば「従業員が社用車をぶつけた修理代」や「レジの違算金」を給与から無断で差し引く行為は、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)や第24条に抵触し、重大な違法リスクとなります。

労基署への届出は必要?36協定との決定的な違い

人事労務の現場で頻繁に誤解されるのが、協定書の「労基署への届出要否」です。時間外労働・休日労働に関する「36協定」は労働基準監督署への届出が効力発生要件となっていますが、賃金控除に関する24協定は労基署への届出義務がありません。

「届出が不要なら形だけの書類でよいのか」といえば、決してそうではありません。届出義務がないからこそ、労基署の臨検監督(調査)や従業員からの内部通告があった際には、協定書の適法性が厳密にチェックされます。協定書を適正に作成・締結し、事業場内の見やすい場所への掲示や社内ネットワークへの保存などにより、従業員へ周知していることが法的な効力の絶対条件です。

見落とすと無効に!「過半数代表者の選任要件」と適法運用の落とし穴

賃金控除協定が無効とみなされる最大の原因が、協定を締結する「過半数代表者の選任要件」の不備です。労働組合がない事業場の場合、代表者を適法に選ぶ必要がありますが、次の2つの要件を厳格に満たしていなければなりません。

第1に、労働基準法第41条第2号に規定する「管理監督者」でないこと(部長や工場長など経営と一体的な立場にある役職者は代表になれません)。第2に、賃金控除協定の締結相手を選出することを明らかにした上で、投票、挙手、労働者の話し合いなどの民主的手続きによって選任されていることです。

会社側が一方的に指名した社員や、親睦会の幹事などを自動的に過半数代表者として処理しているケースが散見されますが、これは法的に完全な無効です。代表者選任の手続きに瑕疵があれば、締結された労使協定そのものが無効となり、結果として過去の給与天引きすべてが賃金全額払いの原則違反(違法な天引き)と判定される危険性があります。

誤払いや損害金の「事後相殺の可否」と企業の法的責任

実務でトラブルになりやすい論点に、賃金の過払いが生じた際や従業員への債権が存在する場合の事後相殺の可否があります。

判例(最高裁判所判決等)において、前月分の給与を誤って多く支給してしまった場合などの「過払賃金の調整的相殺」は、以下の厳格な条件を満たす場合に限り、労使協定なしでも例外的に適法と認められています。

・相殺の時期が誤払いのあった時期と合理的に近接していること(概ね翌月〜翌々月程度)
・あらかじめ労働者に相殺額や計算根拠が予告されていること
・差し引く額が多額にのぼらず、労働者の経済生活を著しく脅かさないこと

この要件を逸脱し、何ヶ月も前の過払い分を予告なく一括で天引きしたり、会社が主張する損害賠償債権を労働者の同意なく一方的に相殺したりする行為は違法です。労働者の「自由な意思に基づく同意」が存在すると客観的に認められる極めて限定的な状況を除き、会社側からの一方的な相殺は厳に慎まなければなりません。

【実務直結】労使協定書の作成手順と記載必須事項

適法な労使協定を締結するために、書面に盛り込むべき必須事項は通達によって定められています。労使協定書テンプレートを作成または改訂する際は、以下の項目を網羅しているか確認が必要です。

【賃金控除協定書に記載すべき4大項目】
1. 控除の対象となる具体的な項目(「親睦会費」「寮費・水道光熱費」「社員食堂利用代金」など具体的に特定)
2. 控除を行う賃金支払日(「毎月25日支給の給与」「賞与支給日」など)
3. 各項目を控除する対象労働者の範囲(「親睦会会員」「寮入居者」など)
4. 有効期間の定め(通常は1年間とし、異議がなければ自動更新とする条項を設けるのが一般的)

曖昧に「その他福利厚生費」などと包括的な記載をすることは認められず、費目ごとに明確化しなければなりません。また、2026年現在の労務現場では、協定書の電磁的記録(電子署名・クラウド管理)による締結や周知も一般化しています。協定の更新時期や対象項目の増減を定期的に見直す体制を整えておくことが不可欠です。

【労使協定に基づく賃金支払時の控除】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:従業員本人が「天引きしてほしい」と個別同意していれば、労使協定がなくても控除できますか?
A1:できません。労働基準法第24条の例外として認められるのは「法令の定め」または「過半数代表者との書面による労使協定」のみです。個々の労働者との合意書や口頭の承諾があっても、事業場単位の労使協定が存在しなければ違法な賃金天引きとなります。

Q2:親睦会費を給与天引きしていますが、退会を申し出た社員からも控除し続けてよいですか?
A2:控除してはなりません。労使協定があっても、天引きの前提となる「親睦会への加入関係」が消滅している場合、控除の根拠を失います。脱退の申し出があった時点で速やかに給与天引きを停止する処理が必要です。

Q3:社用車の事故による修理代を本人の承諾を得て給与から分割天引きするのは可能ですか?
A3:原則として認められません。損害賠償金を給与から直接相殺することは労働基準法で厳格に規制されています。たとえ本人の承諾書があっても、「会社からの圧迫による同意ではないか」と厳しく司法判断されます。給与は全額支給した上で、別途本人の自由意思によって賠償金を支払ってもらう手続きを踏むのが法的な原則です。

給与からの天引きは、日常の事務処理として形式的に行われがちですが、根底には「労働者の生活の糧である賃金を保護する」という労働法制の極めて重要な理念が存在します。

形骸化した過半数代表者の選任や、協定書に記載のない費目の慣習的な天引きを放置することは、企業にとって潜在的なコンプライアンスリスクとなります。自社の給与控除項目を総点検し、適法な協定書の締結と定期的な見直しを行うことが、健全で透明性の高い労使関係を維持するための確かな第一歩です。

同じカテゴリの記事

安藤 澪
コンテンツディレクター 安藤 澪
プロフィールを見る →

観光情報は自治体と施設の公式資料を一次情報とし、季節や営業状況の変化は更新日と一緒に明示します。

おすすめの関連記事