大学入試や定期テストの古典文法で、多くの受験生がつまずく最大の関門が敬語動詞「給ふ(たまふ)」の識別です。「四段活用と下二段活用はどう見分けるのか」「尊敬語と謙譲語の訳し分けで混乱する」といった悩みを抱える人は少なくありません。しかし、文脈ごとの構造と明確な判別ルールさえ押さえれば、得点源に変わる頻出項目でもあります。
2026年の最新入試傾向においても、共通テストや難関私大・国公立二次試験で「給ふ」の文法的識別と現代語訳は問われ続けています。本記事では、活用表の整理から四段・下二段の決定的な見分け方、本動詞と補助動詞の判別、そして会話文特有の謙譲表現まで、失点を防ぐための重要ポイントを徹底的に解説します。
【基本を押さえる】古文「給ふ」の活用表と2つの活用パターンの全貌
古典文法の敬語動詞を理解する第一歩は、ハ行四段活用とハ行下二段活用という2つの活用パターンの違いを視覚的に把握することです。同じ「給ふ」という表記でも、活用形によって語尾が全く異なります。
| 活用種別 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 敬意の種類 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ハ行四段活用 | は(給は) | ひ(給ひ) | ふ(給ふ) | ふ(給ふ) | へ(給へ) | へ(給へ) | 尊敬語 |
| ハ行下二段活用 | へ(給へ) | へ(給へ) | ふ(給ふ) | ふる(給ふる) | ふれ(給ふれ) | (なし) | 謙譲語 |
このように、四段活用では「は・ひ・ふ・ふ・へ・へ」、下二段活用では「へ・へ・ふ・ふる・ふれ・〇」と変化します。古文の本文中に「給へ」「給ひ」「給ふ」のどの活用形が現れているのかを正確に特定することが、正しい現代語訳への近道です。
四段活用と下二段活用の決定的な見分け方|もう識別で迷わない判別法
テストや入試で最も出題されるのが、「給ふ 四段活用 下二段活用 見分け方」です。結論から言えば、3つのチェックポイントを確認するだけで99%識別できます。
まず1つ目の基準は「使われている場所」です。ハ行下二段活用の「給ふ」は、原則として会話文または手紙文(消息文)の中にしか現れません。地の文(語り手の説明部分)に出てくる「給ふ」は、無条件でハ行四段活用(尊敬語)と判断して間違いありません。
2つ目の基準は「接続する動詞の種類」です。下二段活用の「給ふ」は、心内活動や知覚を表す特定の動詞(思ふ、見る、聞く、知るなど)の連用形にしか接続しません。例えば「思ひ給ふ」「見給ふ」といった形であれば下二段(謙譲語)の可能性が極めて高くなります。
3つ目の基準は「語尾の形(活用形)」です。「給ふる」「給ふれ」という形が出てきた場合は下二段活用で確定します。四段活用には「〜ふる」「〜ふれ」という語尾が存在しないため、形を見るだけで瞬時に判別可能です。
本動詞と補助動詞の違いを見抜く|文脈と直前接続で瞬時に見分ける技術
「給ふ」の理解を深める上で欠かせないのが、本動詞と補助動詞の違いです。この識別もルール化されています。
【本動詞の給ふ】
直前に他の動詞を伴わず、単独で述語として使われます。四段活用の本動詞は尊敬語として「お与えになる」「くださる」(「与ふ」「授く」の尊敬表現)という意味になります。なお、下二段活用の「給ふ」には本動詞としての用法はなく、すべて補助動詞として機能します。
【補助動詞の給ふ】
他の動詞の連用形接続で直後にくっつく形をとります。四段活用なら「〜なさる」「お〜になる」という尊敬の補助動詞、下二段活用なら「〜させていただく」「〜いたします」「〜申し上げます」という自分側の動作をへりくだる謙譲の補助動詞となります。
「地の文」と「会話文」で激変する謙譲語の給ふ|テスト頻出の特殊ルール
古文読解で受験生が引っかかりやすいのが、下二段活用の謙譲語が持つ特殊な性質です。一般的に謙譲語は「動作の受け手(客体)」を高めるものですが、下二段活用の補助動詞「給ふ」は「会話の聞き手(相手)」に対する丁重・敬意を表す性質を持ちます。
例えば、「わたくし、かやうに思ひ給ふ」という会話文があった場合、話し手である「わたくし」が自分の動作(思ふ)をへりくだらせることで、話を聞いている相手に敬意を払っています。これを「謙譲語Ⅱ(丁重語)」的用法と呼びます。
このため、主語が一人称(私)であり、かつ会話文の中で「思ひ給へ」「聞き給ふ」と使われていれば、100%下二段活用の謙譲語として訳す必要があります。
試験で絶対に失点しない!「給ふ」の活用と識別の覚え方テクニック
短時間で「給ふ」の識別をマスターするための覚え方を整理しました。試験本番では以下の思考フローを頭の中で実行してください。
ステップ1:文脈の位置を確認
地の文にある → 四段活用(尊敬語:〜なさる/お与えになる)で即決。
会話文・手紙文にある → ステップ2へ進む。
ステップ2:直前の動詞と語尾を確認
「思ひ」「見」「聞き」「知り」などの連用形+「給ふ / 給へ / 給ふる / 給ふれ」になっているか?
YES → 下二段活用(謙譲語:〜ていただく/〜申し上げる)
NO(一般的な動作動詞や主語が高貴な人物) → 四段活用(尊敬語)
特に紛らわしい「給へ」の識別については、「給へ+命令(!」なら四段活用命令形、「給へ+ど・ば」などの接続助詞が続く場合は四段已然形または下二段已然形と、後ろの語句との係り結びを意識することが失点を防ぐコツです。
【給ふの活用】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「給ふ」に謙譲の本動詞は存在しますか?
A1:存在しません。「給ふ」が本動詞(お与えになる・くださる)として使われる場合は、例外なく四段活用の尊敬語です。下二段活用の「給ふ」は必ず補助動詞(〜ていただく/〜申し上げる)としてのみ現れます。
Q2:「給へ」という形が出てきたらどうやって見分ければいいですか?
A2:まず文末で命令の意味なら「四段活用の命令形」です。文中で助動詞「けり」「たり」などが続く場合は「連用形」となるため「下二段活用」、接続助詞「ば」「ど」などが続く場合は文脈の主語(高貴な人物なら四段已然形、話し手自身の心情なら下二段已然形)から判断します。
Q3:なぜ「思ふ・見る・聞く・知る」以外の動詞に下二段の「給ふ」がつかないのですか?
A3:平安時代の文法規範において、自らの心内活動や認識を相手に対して控えめに伝える表現として定型化したためです。身体的な動作(行く・書くなど)には「侍り」「候ふ」が用いられ、「給ふ」は知覚・思考動詞とセットで用いられるのが古典の鉄則です。
古典文法における「給ふ」は、一見すると活用の種類や敬語の意味が複雑に思えますが、「四段=尊敬(地・会話両方)」「下二段=謙譲(会話文のみ・思考知覚動詞接続)」という原則を徹底するだけで、迷うことはなくなります。
実際の試験問題では、傍線部の直前にある動詞と、その文が地の文か会話文かというコンテキストを素早く確認する癖をつけておきましょう。基本公式を頭に叩き込み、過去問や演習問題で実践することで、「給ふ」の識別問題を確実な得点源へと変えていくことができます。