英語の学習中やビジネスメールの作成時、「try doing」と「try to do」のどちらを使うべきか迷った経験を持つ方は少なくありません。学校教育ではどちらも「〜してみる」「〜しようとする」と大まかに教えられるケースが多いため、両者を同義語のように捉えてしまう誤解が後を絶ちません。
しかし、英語ネイティブスピーカーの感覚では、この2つは「実際に行動を起こしたかどうか」という根本的な事実レベルで真逆の状況を表すことすらあります。文脈を取り違えると、相手にまったく異なる事実を伝えてしまうリスクがあるため、本質的なニュアンスの違いを押さえることが不可欠です。
【結論】「try ~ing」の正しい意味は「試しにやってみる」|ネイティブの感覚を紐解く
「try ~ing(動名詞)」の根本的なコアイメージは、「結果がどうなるか分からないけれど、ひとまず試しにやってみる」という行動です。行動を起こすこと自体に大きな苦労や障害はなく、気軽に実験や試行を行うニュアンスを持ちます。
たとえば、パソコンの動作が重い同僚に対して「Try restarting your PC.」と言った場合、これは「(解決するか分からないが)ひとまず再起動してみて」という提案になります。ここで重要なのは、「再起動ボタンを押すこと自体は簡単であり、実際に再起動を試みる」という前提が存在する点です。ネイティブスピーカーは、解決策の1つを軽く試すシチュエーションで自然に「try ~ing」を選択します。
「try ~ing」と「try to」の決定的な違い|なぜニュアンスが変わるのか?
多くの学習者が疑問を抱く「try ~ing」と「try to」の使い分けにおいて、最大の要点は「目的を達成するための労力(ハードル)と意識の方向性」にあります。
「try to do(不定詞)」は、「目標に向かって努力する、なんとか〜しようと奮闘する」という意味合いを持ちます。何らかの困難や障害が存在し、それを乗り越えようと意識を向けている状態を指すため、結果として達成できない可能性を常に内包しています。
具体的な対比で見てみましょう。
・Try drinking this medicine.(この薬を試しに飲んでみて:飲むこと自体は容易で、効果があるか試す)
・Try to drink this bitter medicine.(この苦い薬をなんとか飲もうとしてみて:苦くて飲みにくいものを努力して飲む)
このように、「try ~ing」は行動そのもののハードルが低く「試行」に焦点があるのに対し、「try to」は「努力・挑戦」に焦点が当たります。
過去形にすると差が歴然!「tried ~ing」と「tried to」が伝える真実
この2つの表現の違いが最も顕著に現れるのが過去形(tried)で使われた場面です。文法的な解釈の違いが、そのまま「起きた出来事の真逆の結末」を生み出します。
以下の2文を比較すると、状況の違いが明確に分かります。
・I tried calling him.
(彼に試しに電話をかけてみた = 実際に発信して電話をかけたが、出なかった、あるいは用件を話した)
・I tried to call him.
(彼に電話をかけようとした = 忙しかった、電波が悪かったなどの理由で結局電話をかけられなかった可能性が極めて高い)
「tried to do」は、日常会話において「〜しようと頑張ったけれど、結局できなかった」という未達成の含み(挫折や失敗)を伝える定番フレーズとして機能します。報告業務や事実確認の場でこれらを混同すると、誤った情報を伝達する原因になるため注意が必要です。
動名詞と不定詞の根本的な意味の違い|高校英語文法の重要ルール
なぜ動名詞(~ing)と不定詞(to do)でこのような差が生じるのか、その理由は英語の文法構造が持つ本質的な性質にあります。高校英語の文法で扱われる通り、両者には明確な性質の棲み分けが存在します。
動名詞(~ing)は、「すでに始まっていること、生き生きとした現実の動作、過去から続く経験」を想起させます。そのため「try ~ing」では、動作そのものがすでに現実に行われている感覚が前に出ます。
一方、不定詞の「to」は前置詞の「to(〜へ向かって)」と同源であり、「未来へ向かうベクトル、これから到達すべき目標、未完了の動作」を指し示します。「try to」とした場合、視線は「これから向かう先の動作(まだ到達していないゴール)」に向くため、「到達しようと力を尽くす」という構図が生まれます。
あわせて覚えたい「remember」と「stop」における動名詞・不定詞の使い分け
動名詞と不定詞で意味が大きく変化する動詞は「try」だけではありません。同じメカニズムで意味が分かれる代表的な動詞を押さえておくことで、英語の表現力は格段に安定します。
【rememberの使い分け】
・remember ~ing:(過去に)〜したことを覚えている(経験・過去)
例:I remember meeting her.(彼女に会ったことを覚えている)
・remember to do:忘れずに(これから)〜する(未来・目標)
例:Remember to lock the door.(忘れずにドアに鍵をかけてね)
【stopの使い分け】
・stop ~ing:〜するのをやめる(動名詞がstopの目的語:行っていた動作をストップ)
例:He stopped smoking.(彼は喫煙をやめた/禁煙した)
・stop to do:立ち止まって〜する(不定詞は目的を表す副詞的用法)
例:He stopped to smoke.(彼はタバコを吸うために立ち止まった)
これらもすべて、「~ing=現実・過去の動作」「to do=これから向かう先の動作」という一貫したルールに基づいています。
日常会話・ビジネスでそのまま使える「try ~ing」の実践例文集
実際のコミュニケーションでスムーズに使いこなすための、代表的な実践例文を紹介します。
例文1(アドバイスや提案)
「If you have a headache, try taking a short walk.」
(頭痛がするなら、試しに少し散歩してみてはいかがですか。)
※散歩すること自体に苦難はなく、気分転換として実際に試すことを勧めています。
例文2(新しい体験)
「I tried cooking Thai food for the first time yesterday.」
(昨日、初めてタイ料理を作ってみました。)
※料理を作るという行動を実際に実行した事実を伝えています。
例文3(トラブルシューティング)
「Have you tried clearing your browser cache?」
(ブラウザのキャッシュを試しに削除してみましたか?)
※問題解決の手順として、キャッシュ削除という具体的な動作を実行したかを尋ねています。
【try ing 意味】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「Try and do」という表現も耳にしますが、「try to」や「try ~ing」とどう違いますか?
A1:「Try and do」は、主に口語(カジュアルな会話)で「try to do」の代わりとして頻繁に使われます。「Try and see(やってごらん)」のように、相手を励ましたり前向きに促したりするニュアンスで好まれますが、文法的には「try to」と同じ系統の表現です。
Q2:ビジネスシーンで提案するときはどちらを使うのが適切ですか?
A2:状況によります。「別の方法を一度試してみては?」と解決策を軽く促すなら「Why don't you try using this tool?」のように動名詞を使います。一方、「納期に間に合わせるよう全力を尽くします」と努力の意思を示すなら「We will try to meet the deadline.」と不定詞を使います。
Q3:どちらを使えばいいか迷ったときの簡単な見極め方はありますか?
A3:「その動作をすること自体が大変かどうか」で判断してください。動作自体はすぐできて、効果を確かめたいときは「~ing」、その動作をやり遂げること自体に苦労や努力が必要なときは「to」を選びます。
「try ~ing」と「try to」の違いは、単なる暗記問題ではなく、話者がどのような視点で動作を捉えているかという心理描写の表れです。
「気楽にひとまずやってみる」なら動名詞(~ing)、「困難に向かって努力・挑戦する」なら不定詞(to)。この基本イメージを頭に定着させておくことで、リスニング時の理解度が深まるだけでなく、スピーキングやライティングでも意図通りのニュアンスを正確に伝えられるようになります。