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ファルコンは犬か竜か?『ネバーエンディング・ストーリー』白竜の現在

月岡 空 月岡 空 • 更新: • 公開: • 読了約 9 分
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1984年の劇場公開以来、世界中の映画ファンを魅了し続けている不朽のファンタジー金字塔『ネバーエンディング・ストーリー』。その劇中で、主人公アトレーユを絶望の淵から救い出し、圧倒的な存在感を放ったキャラクターが白竜ファルコンです。つぶらな瞳にモフモフとした毛並み、垂れた耳という愛くるしい姿は、今なお多くの人々の心に焼き付いています。

一方で、視聴者の間では長年にわたり「ファルコンは竜なのか、それとも犬なのか?」という議論が交わされ、一部からは「子どもの頃に見たら少し怖かった」という声も聞かれます。公開から40年以上が経過した2026年現在、映画史に燦然と輝くあの撮影用巨大パペットはどこでどのように保管されているのか、原作設定や制作秘話とあわせて真相を追いました。

【正体とモデル】白竜ファルコンは犬なのか?東洋龍とゴールデンレトリバーの融合

ネバーエンディングストーリーファルコン

多くの初見視聴者が抱く「ファルコン=巨大な白い犬」という印象ですが、劇中での公式な正体は「幸運の白い竜(ラッキードラゴン)」です。空を自在に泳ぎ、決して希望を捨てない者に幸運をもたらす聖なる存在として描かれています。

それにもかかわらず犬に見える最大の理由は、映画版における大胆なクリーチャーデザインにあります。ウォルフガング・ペーターゼン監督と特撮造形チームは、子どもたちに親しみやすさと安心感を与えるため、東洋の長い胴体を持つ龍の骨格に、ゴールデンレトリバーやフォックステリアのような人懐っこい犬の表情を融合させました。

顔には柔らかな白い毛皮が植毛され、鼻先をひくひくさせたり、耳をパタパタと動かしたりする仕草はまさに愛犬そのものです。胴体には無数の真珠色の鱗が緻密に貼り付けられており、ドラゴンの神聖さとペットのような温かみを共存させた奇跡のビジュアルが完成しました。

【原作との違い】ミヒャエル・エンデ著『はてしない物語』におけるフッフール像

映画の原作となったミヒャエル・エンデの名作ファンタジー小説『はてしない物語(Die unendliche Geschichte)』を読むと、ファルコンの描写は映画とは異なる質感を持っています。原作での本来の名前はドイツ語で「フッフール(Fuchur)」と呼ばれています。

原作におけるフッフールは、空気と熱から生まれた存在であり、食事を必要とせず、呼吸のように周囲から栄養を吸収します。翼を持たないにもかかわらず、空中を優雅に泳ぐように飛行する点は映画と同様ですが、その姿はより「東洋の龍」に近い神秘的な風貌です。

また、原作のフッフールは「ブロンズの鐘を打ち鳴らしたような深く美しい歌声」を持つと描写されており、映画版のおじいさんのように親しみやすい語り口とは異なる、神話的な威厳を漂わせています。原作者のエンデ自身は、映画化に際してフッフールが巨大な犬のような姿に変更されたことに当時強い不満を示したという有名な逸話も残されています。

【絆と役割】主人公アトレーユとファルコンが紡いだ「幸運の白い竜」の奇跡

物語の中盤、アトレーユとファルコンの関係性は観客の涙を誘う重要な転換点となります。アトレーユが「悲しみの沼」で愛馬アルタクスを失い、深い絶望に沈んで意識を失った瞬間、上空から舞い降りて彼を救い出したのがファルコンでした。

ラッキードラゴンであるファルコンの最大の特徴は、自ら特別な魔力を使うのではなく、「ただ諦めない心を持つ者に信じられない幸運を引き寄せる」という能力にあります。「幸運を信じるかい?」と語りかけ、過酷な試練に立ち向かう少年戦士アトレーユの背中を支え続ける姿は、ファンタジー映画史に残るバディ関係として高く評価されています。

【ネットの噂】「ファルコンが怖い」と語られるトラウマの理由と巨大パペットの裏側

愛されキャラであるファルコンですが、インターネット上では「子どもの頃に見てトラウマになった」「顔が少し怖い」という意見も根強く存在します。この理由には、当時の特撮技術と演出が関係しています。

当時制作された撮影用ファルコンは、全長約15メートル、重さ数トンに及ぶ巨大な機械仕掛けのパペット(アニマトロニクス)でした。CGが存在しない1980年代前半、モーターとケーブルを駆使して目や口、舌を動かしていましたが、クローズアップ時に見せる「ぎょろりとした大きな眼球の動き」や「人間のような平らな歯並び」が、一部の鑑賞者にいわゆる“不気味の谷現象”を引き起こしたと分析されています。

加えて、劇中で凶暴な人狼グモルクと対峙した際に見せた威嚇の表情や、突如として画面いっぱいに現れる超巨大な顔のサイズ感が、幼少期の視聴者に強い恐怖心を植え付けた要因となっています。

【名吹き替え】歴代日本語吹き替え声優陣が吹き込んだファルコンの温もり

日本国内でファルコンがこれほどまでに愛された背景には、昭和から平成にかけて制作された日本語吹き替え版の豪華な声優陣の功績があります。

テレビ朝日「日曜洋画劇場」版では名優・黒沢良さんが担当し、深みと落ち着きのある紳士的なトーンでアトレーユを導く長老のような存在感を表現しました。また、ソフト版やテレビ東京版で声を担当した富田耕生さんは、温厚でお茶目な祖父のような親しみやすさをファルコンに吹き込み、世代ごとのファンに深い印象を残しています。

英語版のオリジナル音声が持つ独特のしゃがれた声質に対し、日本の吹き替え陣は「頼れる守護神」「温かい相棒」としてのニュアンスを巧みに強調し、キャラクターの魅力を何倍にも引き上げました。

【2026年現在の姿】ババリアフィルムスタジオに眠る実物パペットの展示と保存状況

映画公開から長い年月を経た2026年現在、撮影に使用された本物のファルコンはどこにあるのでしょうか。その答えは、ドイツ・ミュンヘン郊外にある名門映画撮影所「ババリア・フィルム・スタジオ(Bavaria Filmstadt)」にあります。

同スタジオ内のツアー施設では、実際に撮影で使われたファルコンの実物大パペットが常設展示されています。一時期は経年劣化による毛並みの傷みや変色が懸念されていましたが、入念なレストア(修復プロジェクト)が施され、往時の白く輝く姿を取り戻しました。

現在も世界中から映画ファンが訪れており、ブルーバックのスタジオでファルコンの背中に乗り、実際に空を飛んでいるかのような記念写真や映像を撮影できる体験アトラクションとして大人気を博しています。

【ネバーエンディング・ストーリー ファルコン】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:ファルコンのモデルになった動物は何ですか?
A1:明確な単一のモデルは公表されていませんが、デザインを手がけた特撮チームは、東洋の龍のフォルムをベースにゴールデンレトリバーなどの長毛犬の表情や特徴を取り入れて造形しました。

Q2:映画の中でファルコンが飛ぶときの仕組みはどうなっていたのですか?
A2:当時はCGではなく、ブルーバック合成と巨大なクレーン、油圧システムを組み合わせて撮影されました。頭部や表情を動かすだけでも十数人のスタッフが手作業でワイヤーやスイッチを操作していました。

Q3:原作の小説『はてしない物語』と映画のファルコンはどちらが強いですか?
A3:原作のフッフールは天候を操り、ブロンズの歌声で周囲を魅了するなど、より精霊的・神秘的な力を持っています。映画版はアトレーユを物理的に乗せて疾走する力強さと愛嬌が際立っています。

白竜ファルコンは、単なるファンタジー映画のモンスターにとどまらず、絶望に抗う勇気と「決して希望を捨てない心」を象徴する映画史上のアイコンです。犬のような親しみやすさとドラゴンの神秘性を併せ持ったその造形は、CG全盛の現代においても色あせることのない温もりを放ち続けています。

ドイツの撮影所に今も大切に残されているその姿は、かつてスクリーン越しに夢を見た世界中の大人たちに、いつでも「幸運を信じる力」を思い出させてくれます。

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トレンドリサーチャー 月岡 空
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