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実在する黄金のトイレはどこに?盗難の真相と現在の価値を追跡

星野 楓 星野 楓 • 更新: • 公開: • 読了約 10 分
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富の象徴か、それとも痛烈な風刺か――。「黄金のトイレ」という言葉を聞いたとき、多くの人が絵空事や都市伝説を思い浮かべる可能性があります。しかし、純金や18金で作られた便器は実在し、世界各国の美術館や富豪の屋敷、さらには日本の格式ある施設にまで姿を現してきました。

なかでも世界的な大ニュースとなったのが、イギリスの名門貴族の館から白昼堂々奪い去られた18金製トイレの盗難劇です。あれから時を経て、犯行グループの裁判や行方の追跡が進む一方、香港や日本に存在する豪華絢爛なトイレスペースにも再び熱い視線が注がれています。本稿では、世界各地に実在する黄金のトイレの所在地や驚愕の総工費、本当に使えるのかという疑問から未解決に近い盗難事件の深層まで、最新情報を交えて徹底解剖します。

【全貌解明】実在する「黄金のトイレ」はどこにある?世界と日本の展示場所

黄金のトイレ

「黄金のトイレはどこにあるのか」という問いに対しては、実は複数の答えが存在します。世界的に最も広く知られているのは、イタリア出身の現代美術家マウリツィオ・カテランが手がけた18金無垢の彫刻作品『アメリカ(America)』です。この作品は米ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館で初公開され、後にイギリスのブレナム宮殿へ巡回しました。

アジア圏に目を向けると、香港の宝飾品メーカー創業者である林世栄(ラム・サイウィン)氏が2001年に建造した「スイスホーン・ゴールド・パレス(金皇宮)」に鎮座する純金トイレが名を馳せています。香港九龍のショールームに設置され、観光名所として連日多くの見学者を集めました。

一方、日本国内で「黄金のトイレ」と称されて語り継がれている代表格が、東京都目黒区にあるホテル雅叙園東京(旧・目黒雅叙園)の超豪華化粧室です。金属の塊ではなく漆工芸や螺鈿(らでん)、金箔を惜しみなくあしらった絢爛豪華な空間は、通称「1億円トイレ」と呼ばれ、宿泊客やレストラン利用者が今も自由に出入りできる開かれた名所となっています。

【総工費と価値】18金製から純金まで!規格外の値段と費用を比較

黄金のトイレと一口に言っても、その素材と制作アプローチによって評価額や総工費は桁違いの開きがあります。主要な黄金トイレの規模と金銭的価値を比較してみましょう。

カテランの『アメリカ』は、便器本体に約103キログラムの18金が使用されています。2019年の盗難被害発生時の保険評価額はおよそ480万ポンド(当時の為替レートで約6億5000万円、最近の金相場高騰下では約9億〜10億円相当)と試算されました。地金としての価値だけでも天文学的ですが、美術品としてのプレミアムが上乗せされることで天文学的な評価が下されています。

対して香港の純金トイレは、24金(純金)を約1トン以上使った宮殿全体の一部として作られ、トイレ単体でも総工費約3800万香港ドル(当時のレートで約5億〜6億円)が投じられました。ギネス世界記録にも「最も高価なトイレ」として認定された経歴を持ちます。

日本の目黒雅叙園の化粧室は、1991年の百段階段を含む目黒雅叙園改修時に総工費約1億円を投じて新設されたものです。こちらは便器そのものが金無垢というわけではなく、天井の金箔絵画、螺鈿細工の個室ドア、室内に架かる朱塗りの太鼓橋など、伝統工芸の粋を集めた空間全体の贅沢さに対する価格設定となっています。

【実際に使えるのか?】機能性と一般客の利用・体験ルールを検証

美術品や展示物として鎮座する黄金のトイレですが、「実際に用を足すことができるのか」という疑問は多くの鑑賞者が抱くところです。

驚くべきことに、カテランの『アメリカ』は完全配管された実用可能なトイレとして公開されていました。グッゲンハイム美術館展示時には、個室の外に警備員が立ち、鑑賞者は1人あたり数分間のプライベートな利用時間が与えられました。約10万人もの来館者が実際に用を足し、富裕層の贅沢を一般市民が体感するという強烈なコンセプトが見事に成立していたのです。

これに対し、香港の純金トイレは基本的に観覧専用であり、実際に用を足す設備としては開放されていませんでした。見学者は純金フロアを傷つけないよう靴カバーの着用を義務付けられ、便座の上に腰掛けて記念撮影を行うことのみが許される厳重な運用が取られていました。

日本のホテル雅叙園東京の化粧室は、館内の現役レストルームとして誰でも日常的に利用可能です。個室内部まで職人技が施されており、手洗いや用を足す行為そのものが日本庭園を歩くような非日常体験へと昇華されています。

【盗難事件の真相】英ブレナム宮殿から消えたカテラン作品「アメリカ」の現在

2019年9月14日未明、世界を揺るがす大事件が発生しました。元英首相ウィンストン・チャーチルの生誕地として世界遺産に登録されている英国オックスフォードシャーのブレナム宮殿から、展示中だったカテランの『アメリカ』が忽然と姿を消したのです。

犯行グループは深夜に宮殿へ侵入し、配管に直結されていた黄金のトイレを力任せに引き剥がして持ち去りました。この強引な手口により、歴史ある宮殿内は配管破裂による大規模な冠水被害に見舞われました。

周到に計画された犯行と見られ、長らく被疑者の特定が難航していましたが、英警察の粘り強い捜査により複数の容疑者が逮捕・起訴されました。公判が進む中で手口の全貌が明らかになりつつあるものの、トイレ本体は現在に至るまで回収されていません。

捜査関係者や貴金属の専門家は、100キロを超える18金という性質上、犯行グループの手によって即座に切断・溶解され、追跡不能な地金インゴットとして闇市場で売り払われた公算が極めて高いと分析しています。稀代のアートピースは、物理的な形を失いながらも「消えた黄金」の伝説として美術史に刻まれることとなりました。

【日本と世界の象徴】香港の純金宮殿と目黒雅叙園「1億円トイレ」の魅力

黄金のトイレというモチーフは、洋の東西を問わず時代と文化を映し出す鏡となってきました。

香港の金皇宮を手がけた林世栄氏は、幼少期に敬愛したレーニンの「社会主義が勝利した暁には、公衆便所を黄金で作るだろう」という言葉に着想を得て純金トイレを製作したと語っています。資本主義の最前線である香港で、貴金属ビジネスのプロモーションとして作られたその姿は、2000年代初頭のアジア経済の熱気をそのまま封じ込めたモニュメントでした。

一方、日本のホテル雅叙園東京が提示する空間は、金箔や漆を「清潔と雅(みやび)」の美意識へと昇華させたものです。茶室建築の意匠を取り入れた個室内には小川が流れ、橋を渡って個室へ向かう動線が組まれています。成金的な誇示とは一線を画し、訪れる客への究極の「もてなし」として贅を尽くした空間設計は、インバウンドの旅行者からも世界最高峰のレストルーム文化として称賛を集め続けています。

【黄金のトイレ】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:盗まれたブレナム宮殿の黄金トイレは今どこにあるのですか?
A1:盗難されたカテラン作の便器本体は現在も見つかっていません。犯行グループの裁判は進行していますが、専門家の間では盗難直後に細かく裁断・溶解され、金塊として換金・流通してしまった可能性が最も高いと考えられています。

Q2:日本国内で黄金のトイレを見学・利用できる場所はありますか?
A2:最も有名な場所は「ホテル雅叙園東京(旧・目黒雅叙園)」の1階にある通称「1億円トイレ」です。金箔や螺鈿細工が施された豪華な化粧室で、宿泊や館内レストランを利用する際に実際に中へ入って利用することができます。また、有田焼の絵付け金箔便器などを展示する美術館やショールームが各地に点在しています。

Q3:なぜ美術家はわざわざ「トイレ」を黄金で作ったのですか?
A3:作者のマウリツィオ・カテランは、極端な富の格差や拝金主義をアイロニカルに風刺するためにこの作品を制作しました。「どんな大富豪であれ貧しい庶民であれ、食べるものを消化し排泄する行為は平等である」という事実を、誰もが知る高級貴金属である金と最もプライベートな便器を組み合わせることで強烈に表現しています。

黄金のトイレは、単なる奇抜な金満アイテムではありません。ある場所では経済成長の熱量を誇示する広告塔となり、ある場所では不平等な社会構造をユーモアで撃ち抜く現代アートとなり、またある場所では日本の伝統美を凝縮した究極のおもてなし空間として結実しています。

イギリスで起きた衝撃の盗難事件は、物質としての金が持つ絶対的な魔力と、アートが持つ儚さを同時に浮き彫りにしました。形を失ってもなお人々の記憶と議論に残り続ける黄金のトイレは、私たちが物質や価値に対して抱く欲望のあり方を、これからも静かに問いかけ続けています。

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