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枕草子「中納言参りたまひて」敬語の完全攻略!敬意の方向と品詞分解

夏目 恋 夏目 恋 • 更新: • 公開: • 読了約 11 分
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高校の古文定期テストや大学入学共通テスト対策で、ほぼ確実に直面するのが『枕草子』の有名章段「中納言参りたまひて」です。教科書を開いて冒頭のタイトルを見た瞬間、「参り」と「たまひ」が連なる独特の敬語表現や、「結局これは誰から誰への敬意なのか」という敬意の方向の複雑さに頭を抱えてしまう受験生は少なくありません。

この章段は、平安貴族のスマートな機知(ウィット)を描いた名文であると同時に、古典文法の敬語ルールが美しく凝縮された最高の学習素材でもあります。「参りたまひて」の構造を品詞レベルで分解し、登場人物の力関係を正しく把握すれば、テストで問われる敬語問題はすべて得点源に変わります。

【敬語の種類と敬意の方向】「参りたまひて」を徹底解剖!なぜ謙譲語と尊敬語が重なるのか

中納言参りたまひて敬語

冒頭の一文「中納言参りたまひて」には、古文読解における最重要ルールが詰まっています。ここで使われている敬語の種類と敬意の方向を分解して整理しましょう。

最初に、「参りたまひて」は本動詞「参る」+補助動詞「たまふ」+接続助詞「て」という構造です。一見すると敬語が2つ重なっているため混乱しがちですが、それぞれの役割は明確に分かれています。

・「参り」(マ行四段活用動詞「参る」の連用形):謙譲語(〜へ参上する・伺う)
・敬意の方向:地の文の筆者(清少納言)から、訪問先である「中宮定子」への敬意
動作の受け手(客体)を高める働きをしています。

・「たまひ」(ハ行四段活用補助動詞「たまふ」の連用形):尊敬語(〜なさる・お〜になる)
・敬意の方向:地の文の筆者(清少納言)から、参上した動作主である「中納言(藤原隆家)」への敬意
動作の主語(主体)を高める働きをしています。

つまり、全体の現代語訳は「中納言(藤原隆家)が(中宮定子の御所へ)参上なさって」となります。清少納言から見て、中宮定子も中納言隆家も身分が上であるため、定子に対しては謙譲語を、隆家に対しては尊敬語を同時に使い、両者へ礼を尽くした敬語表現が成立しています。

【完全品詞分解&現代語訳】テスト直前に確認すべき重要箇所の徹底対照表

定期テストや模試で出題されやすい冒頭から中盤までの重要フレーズを品詞分解し、現代語訳とセットで確認しましょう。

【原文】
中納言参りたまひて、御扇奉らせたまふに、「隆家こそ、いみじき骨は得て侍れ。それを張らせむと侍るに、難きこと侍る。」と申し給へば、

【品詞分解】
・中納言(名詞)
・参り(マ行四段動詞「参る」連用形・謙譲語)
・たまひ(ハ行四段補助動詞「たまふ」連用形・尊敬語)
・て(接続助詞)
・御(接頭語・尊敬)
・扇(名詞)
・奉ら(ラ行四段動詞「奉る」未然形・謙譲語)
・せ(使役の助動詞「す」連用形 ※ここでは最高敬語の尊敬補助とする説もあり)
・たまふ(ハ行四段補助動詞「たまふ」連体形・尊敬語)
・に(接続助詞)
・隆家(名詞)
・こそ(係助詞)
・いみじき(形容詞「いみじ」連体形)
・骨(名詞)
・は(係助詞)
・得(ア行下二段動詞「得」連用形)
・て(接続助詞)
・侍れ(ラ行変格動詞「侍り」已然形・丁寧語・「こそ」の結び)
・それ(代名詞)
・を(格助詞)
・張ら(ラ行四段動詞「張る」未然形)
・せ(使役の助動詞「す」未然形)
・む(意思の助動詞「む」終止形)
・と(格助詞)
・侍る(ラ行変格動詞「侍り」連体形・丁寧語)
・に(接続助詞)
・難き(形容詞「難し」連体形)
・こと(名詞)
・侍る(ラ行変格動詞「侍り」終止形・丁寧語)
・と(格助詞)
・申し(サ行四段動詞「申す」連用形・謙譲語)
・給へ(ハ行四段補助動詞「給ふ」已然形・尊敬語)
・ば(接続助詞)

【現代語訳】
中納言(藤原隆家)が(中宮定子のもとへ)参上なさり、扇を(定子に)献上なさるときに、「この隆家が、大変見事な(扇の)骨を手に入れましてございます。それに紙を張らせようと思っておりますが、(それにふさわしい紙が)なかなか見つかりません。」と(中宮定子に)申し上げなさると、

【古文読解のコツ】誰から誰へ?古文における「敬意の方向」の見分け方マニュアル

古文読解全般で使える「敬意の方向の見分け方」の鉄則は次の3ステップです。この手順通りに処理すれば、どんなに入り組んだ敬語でも迷いません。

ステップ1:地の文か会話文かを見極める
・地の文:敬意の発信者は「筆者(作者)」(枕草子なら清少納言)。
・会話文:敬意の発信者は「話者(しゃべっている人物)」。

ステップ2:敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧)を判定する
・尊敬語:主語(動作の主体・〜なさる人)を高める。
・謙譲語:目的語(動作の相手・客体・〜申し上げる相手)を高める。
・丁寧語:聞き手・読者を高める(会話なら相手、地の文なら読者)。

ステップ3:文脈の主語・目的語を補う
古文は主語や目的語が頻繁に省略されます。「中納言参りたまひて」なら、動作主は「中納言隆家」、目的地は「中宮定子の御所」です。したがって、「参り(謙譲)」は目的地である中宮定子への敬意、「たまひ(尊敬)」は動作主である中納言隆家への敬意となります。

【人物相関図と背景】中宮定子・藤原隆家・清少納言の関係性を知れば文脈がスッと頭に入る

敬語の方向を感覚的に理解するためには、登場人物の血縁と宮廷内での身分関係を知ることが近道です。

・中宮定子(ちゅうぐう ていし)
一条天皇の正妻(皇后)。当時の宮廷サロンの絶対的中心であり、清少納言の主君。作中における最高位の存在です。

・藤原隆家(ふじわらの たかいえ)
中納言。中宮定子の実の弟にあたります。若々しく才気あふれる貴公子で、姉である定子にも気さくに話しかけますが、公の立場としては中宮に対する臣下です。

・清少納言(せいしょうなごん)
中宮定子に仕える女房(女官)。『枕草子』の作者。定子を心から崇拝しており、機転の利く知性でサロンを盛り上げます。

弟の隆家が姉の定子のもとを訪れるという家族的な親しみやすさがありつつも、宮中という公の場であるため、会話や描写にはきっちりとした敬語が使われています。この「格式の高さとアットホームな機知の共存」が、この章段の最大の魅力です。

【定期テスト頻出】「扇の骨」を巡る名場面!清少納言のウィットと出題ポイント

敬語問題と並んでテストで確実に狙われるのが、「扇の骨」を巡る隆家と清少納言のユーモラスな応酬です。

隆家は自慢げに「類(たぐひ)なき骨(並ぶものがないほど素晴らしい扇の骨)」を手に入れたと言い、「普通の紙では張れない。見たこともないような骨なのだ」と誇張して語ります。

それに対して清少納言はすかさずツッコミを入れます。
「それは扇の骨ではなく、『くらげの骨』なのではございませんか?(くらげには骨がないため、本当に『見たこともない骨』ですね)」

「見たこともない骨=この世に存在しない骨=クラゲの骨」という痛快な言葉遊びに、隆家は「一本取られた!」と笑い、「これは隆家が言ったことにしたいものだな」と清少納言の機転を称賛します。

【テスト対策で狙われる問い】
1. 「くらげの骨」と清少納言が言ったのはなぜか?
→ 隆家が「見たこともない素晴らしい骨」と大げさに自慢したのに対し、「本当に見たことがない骨なら骨のないクラゲの骨だろう」とユーモアで返したため。
2. 隆家の発言「これ、隆家が言ひにしてむ」の心情は?
→ 清少納言の見事な返答に感服し、自分が言った機転の利いた冗談にしてしまいたいほど悔しく、かつ感心している気持ち。

『枕草子』や平安古文で頻出する敬語動詞を一覧に整理しました。テスト前の総点検に活用してください。

【尊敬語(主語を高める)】
・のたまふ・仰す(おっしゃる)
・ごらんず(ご覧になる)
・おはす・おはします(いらっしゃる)
・たまふ(お〜になる・〜なさる)

【謙譲語(相手・客体を高める)】
・申す・聞こゆ・聞こえさす(申し上げる)
・参る・参づ(参上する)
・奉る(差し上げる)
・承る(お聞きする・お受けする)

【丁寧語(聞き手・読者を高める)】
・侍り(はべり)(ございます・〜です・〜ます)
・候ふ(さぶらふ)(ございます・〜です・〜ます)

【中納言 参り た まひ て 敬語】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:「参りたまふ」は二重敬語(最高敬語)ではないのですか?
A1:二重敬語ではありません。二重敬語は「せ給ふ」「させ給ふ」のように尊敬語を2つ重ねて同一人物を高める表現です。「参りたまふ」は謙譲語(参る)+尊敬語(たまふ)の組み合わせであり、客体(中宮定子)と主体(中納言隆家)という別々の人物に同時に敬意を払う「敬語の併用」です。

Q2:隆家のセリフに出てくる「侍れ」「侍る」の敬意の方向は?
A2:会話文中の丁寧語ですので、「話者である中納言隆家」から「聞き手である中宮定子(およびその場にいる女房たち)」への敬意となります。

Q3:なぜ清少納言は主君の弟である隆家に敬語(たまふ)を使っているのですか?
A3:清少納言は女房(受領層の身分)であり、藤原隆家は大臣一族の高官(公卿・中納言)であるため、圧倒的な身分差があります。そのため、地の文であっても隆家に対して敬意を表すのは当時の宮廷作法として当然のことでした。

『枕草子』の「中納言参りたまひて」は、敬語の文法規則と平安サロンの洗練された会話劇が見事に調和した屈指の名文です。「参り(謙譲・客体への敬意)」と「たまひ(尊敬・主体への敬意)」の組み合わせを一度論理的に理解してしまえば、類似の古文問題でも迷うことはなくなります。

文法構造の把握に加えて、定子・隆家・清少納言の微笑ましいやり取りの背景を頭に入れておくことで、単なる暗記にとどまらない深い読解力が身につきます。ポイントを押さえて、次の定期テストや模試で確実な得点アップを掴み取りましょう。

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